2015年2月2日月曜日

あらためて珈琲のこと Vol.1 水質と湯温

基本的なことだが、珈琲豆自体は湯に溶けない。
溶けているのは、焙煎によって焼成されたカフェインなど700種類以上にもおよぶ化学成分である。

これは焙煎によって珈琲豆内部に生じた平均7ミクロンともいわれるごく小さな孔の中に出来る。
それを幾種類かある抽出方法によって溶解させて飲んでいるのが珈琲という飲料なのだ。

あらためて珈琲のことを考えるにあたって、まずはこの溶解の媒体となる「水」について書いてみる。


水の種類

水に硬水と軟水がある。
硬水にはイオン化されたミネラル成分が含まれており、珈琲の味を形作っている様々な化学物質といろんな形で化合してしまう。ゆえに本来の味が出にくくなる。
わざわざ飲用のミネラルウォーターで淹れるのは逆効果になる可能性がある。
珈琲の抽出には軟水が適当だろうと思う。
家庭用浄水器を通した水が最も現実的な選択といえるだろう。

エスプレッソの本場はイタリアで、イタリアは硬水だから、エスプレッソには硬水がいいと薦めている珈琲屋があったが、バカなことを言ってはいけない。
確かにヨーロッパの水は硬水であり、だから基本的に最初から味が出にくい環境で珈琲文化を作ってきたところがある。
だからこそ味を強めに出すための「深煎り」が基本なのだろうし、それが結果的にエスプレッソという抽出法に辿り着く素地だったのだというだけことだ。
水道水で軟水が提供される日本では、このような前提に依らない、豊かで複雑な香味を保ったままの独自の珈琲文化を育てていける可能性があると思う。
自分自身も担い手の一員として、ここにこそ最大限の努力をしたいと思っている。


湯の温度

たとえばボンゴレビアンコを作るときの最大のポイントは、あさりから出てくる風味豊かな水分を、本来混じり合わない油であるオリーブオイルを過熱することで、熱力学的に非平衡な分散状態に移行させ混合白濁させるところにある。
これは乳化現象=エマルションと言われる。

珈琲豆も油分である。そして湯で溶かす。
だから一定の熱量があればエマルションが起き、よくできたボンゴレビアンコのように活性化した味が手に入る。

僕は珈琲豆の酸化を遅らせるために冷蔵庫で豆を保管しているので、かなり高めの温度にした湯を使う。
だいたい95度前後。
これでも抽出にかかる二分半を経てカップの温度は80度そこそこ。
少し熱めだが、味がわからない程ではない。
感覚的な話だが、なにより珈琲の持っているポテンシャルをぐっと引き出した実感を持てるのがいい。

逆に低い温度で淹れると、灰汁が出にくくなったり、脂分の持つ強い非平衡性がカップに混じらないためキレイで澄んだ味になるという側面もある。
だからこれは好みの問題だと思う。

湯温をどうするかは、注湯、もしくは浸漬のスピード(時間)と合わせて、抽出の段階で珈琲の味を作る大きなポイントなのである。
上記の原則を念頭において、いろいろ試してみて欲しい。

2 件のコメント:

  1. コーヒー好きで普通の人よりはこだわって淹れているつもりでしたが、ここまで深く考えたことはありません。素晴らしいです。なるほど、と目からウロコ……。僕は好奇心だけは旺盛なんですが、広く浅くでしかないなぁ、と反省しています。
    この続きもとても楽しみにしています!

    ちなみに、そちらのことは Google+ で知りました。その直後にひょっとしたら少しやりとりさせてもらったことがあるかもしれません。当方神奈川在住なのでなかなかそちらには出向けませんが、もし札幌に行く機会があったら、ぜひともお邪魔させてもらいたいです!

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    1. ありがとうございます!続きもがんばって書きますね。札幌にいらっしゃることがあったらぜひお寄りください。お待ちしております。

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