2022年2月28日月曜日

シリーズ:美味しいコーヒーを淹れよう 【5】ペーパードリップでコーヒーを淹れる

 いよいよ最終工程です。コーヒーを淹れてみましょう。

まずは、この「淹れる」という工程において、美味しいコーヒーを淹れるための基本的条件をお伝えします。

それは「粉をたっぷり使う」ということです。

ペーパードリップの原理は、湯が「重力」の力で移動するエネルギーを使って抽出する、というものです。

重力は必ず垂直方向に働きますから、上下方向の距離が長い方が有利です。(ゆえに三角錐のドリップ器具が特性的に優れています)

この距離確保のために粉をたっぷり使いましょう、ということです。

一般的なドリップ系(透過法)器具での一人分の粉の量は10gと言われていますが、円錐形ドリッパーの嚆矢KONO式では12gと設定しています。

気持ち、多めに粉を使うことで味がよくなります。

ここでもう一つ注意点が。

一般的なドリップフィルター(円錐でも船形でも)で、一人分は入れないでください、ということです。

最低二人分、粉にして20g以上、できれば25g程度で淹れて欲しい。これも上下方向の距離確保の観点です。


注湯に関しては、新鮮なコーヒー豆を使っている限りは、それほど神経質に考えなくても、粉自体が膨らんで、ゆっくりと少量づつしか注げないはずです。

粉の膨らみに任せて、最終的に抽出したい量まで、連続的にでも、断続的にでもお湯を注いでいただければ美味しいコーヒーが出来上がるはずです。

ここでの注意点は、むしろ注ぎ終わりの問題です。

終盤、フィルターの中は灰汁で一杯になっていますが、灰汁自体は軽いのでお湯を注いでいるうちは落ちてきません。これをなるべくカップに落とさないために、抽出を終える際、フィルターにお湯が一杯の状態で、サーバーから外して欲しいのです。

少し工夫が必要ですね。僕は、サーバーごと持ち上げて、シンクの上で外して、そのままフィルターだけシンクに置いちゃいます。

フィルターを持ち上げて別のカップで受けて置く方もよく見かけますね。


抽出に関しては、

「粉をたっぷり使う」のと、「灰汁を落とさないように、フィルターがお湯で一杯の状態で外す」

の2点に気をつけていただければ、美味しいコーヒーができると思います。ぜひお試しください!


最後に連続写真で、KONO式抽出術の奥義(と言っても超簡単)を解説しよう。僕は毎日練習して1ヶ月かかりました。焦らずに練習してください。

なるべく粉を平らにします。強めに左右に振ると上手くいきます

最初数滴ポタポタと90度以上のお湯を中心に垂らすと、膨らんできてベッドができます

ベッドを広げていくように円形に中から外へ回しながら注滴していきます

必要な量の珈琲液ができたらサーバーから外して別カップかシンクに

お湯が落ち切った時、綺麗な円錐形になっているのが理想です


2022年2月25日金曜日

シリーズ:美味しいコーヒーを淹れよう 【4】コーヒー豆を挽く

「コーヒー豆を挽く」という作業は、エクスペリエンスとしてのコーヒーのクライマックスだと思う。


粉になった状態で簡単に入手できるコーヒー豆を、わざわざ家で挽くという特別感。

立ち昇る、陶酔の芳香。

そして挽いてからの時間こそが、コーヒー粉が激しい酸化に曝される過酷な時間帯で、この長短が、最も味に影響のあるポイントなのだ。


だからぜひ、ミルを入手してみていただきたいのだが、いやいやミルまでは、という方は、コーヒー豆を買うとき、お店で「中細挽き」にしてもらってください。

挽き目は味の好みで変えるものではなく、器具との適性によって決まる。ペーパードリップの場合は、「中細挽き」が最適です。

おうちのミルを調整する際には、「グラニュー糖」くらいの大きさを基準にして挽き目を決めると良いでしょう。


そしてこの機会にミルを買ってみるか、と思った貴方には、少し高価ですがカリタのナイスカットGをお薦めします。

理由は、とにかくお手入れが楽だ!ということに尽きます。

手回しのものや、カット刃が露出している電動タイプは、コーヒーを淹れた後のお掃除がとにかく大変。

ちょっとこのデザインは・・と思われる方も、これに似たタイプのものから選ばれるのが良いと思います。


ちなみにカフェジリオで使っているのは、富士珈機さんの「みるっこ」ですが、モーターが強力すぎて、粉の扱いが少し厳し目です。

その分、モーターに余力があり、故障知らずではあります。

写真の黄色い方が「みるっこ」
写真の黄色い方が「みるっこ」珈琲サイフォン社さんの別注モデルです。








鎌倉のカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュさんが販売していた別注カラーがカッコいいので、ご紹介しておきますね。これ欲しかったなあ・・

※今は販売していないようです。









2022年2月24日木曜日

シリーズ:美味しいコーヒーを淹れよう 【3】とりあえず抽出はペーパードリップに決めて、器具を選ぶ

生活に、エクスペリエンスとしての「美味しいコーヒー」を導入してみませんか、と云うのが本シリーズの趣旨である。

コーヒーの淹れ方はたくさんあるが、エクスペリエンスそのものの楽しさ、とそれを阻害するものがなるべく少ないことが条件になる。

自分の手仕事の具合が大きく味に影響することや、器具や消耗品の入手のしやすさ、お手入れの簡便さを考えると、やはりペーパードリップが一番いいと思う。

ペーパードリップの器具にも色々ある。

エクスペリエンスとしての「美味しいコーヒー」をと云う趣旨に沿って云うなら、デザインの良いものを選ぶのが最良の道だ。

僕は自分がKONOの珈琲塾で最初の修行をしたので、機能的にも、デザイン的にも、どうしてもKONO贔屓になる。

歴史あるKONOロゴがついているだけで、美味しいコーヒーが入りそうな気がしてしまうし、丸みを帯びたサーバーも唯一無二の美しさだと思う。



しかもこの丸みが、紅茶を入れる際のジャンピングにも最高によく機能出るのである。ちなみにサーバーの蓋についている注ぎ口がくし状になっているのは、これが「茶漉し」だからなのである。ちゃんと説明書にもそう書いてある。


ただし、悪いところもあって、ドリッパー(フィルター)のプラスティック素材が劣化しやすく、コーヒーの色がつきやすい。

河野先生に知られたら怒られそうだが、同じ三角錐のハリオに、ガラス製のドリッパーがあって、デザインも良いため、プライベートではこちらを使っている。(ご内密にお願いいたします)



まあ、デザインには好みがあるし、良いデザインの器具を探し回ること自体の楽しみがコーヒーのエクスペリエンスでもある。


ドリップで淹れる際には、ポットも重要だ。

ポタポタと雫状にお湯を入れていくの基本だから、最初のうちはうまくいかない。

これをポットのせいにして、器具を探し回る人も多い。

多少、入れやすい入れにくいはあれど、最終的には慣れの問題です。自分を信じて毎日淹れているうちに、気持ち良いほど上手に入るようになりますから、それ自体が楽しくなるように、気に入ったデザインのものを選んで気長に付き合ってください。

ただし、最近のおしゃれポットには容量が少ないものが多い気がします。

多少お湯は無駄になるのですが、最低600cc前後のものを選ぶと、「傾ける角度」が小さくなり、上手に入りやすいです。



2022年2月23日水曜日

シリーズ:美味しいコーヒーを淹れよう 【2】自分好みの豆を手に入れる

前回の【1】まずは「新鮮な」豆を手に入れるで、焙煎からの鮮度が重要であると述べた。

しかし、コーヒー豆にはたくさんの種類がある。

「どれを選べばいいか」とお店に問えば、「どんな味が好きですか」と逆に訊かれる。

「どんな味があるんですか」と問い直してみれば、おそらく「酸味系か苦味系か」というような答えが返ってくるだろう。

しかし、コーヒーの味というのはもう少し複雑なものなのである。




概ね、専門店で豆を買えば、それは「アラビカ種」の豆である。それがさまざまな国で栽培され、その土地の風味で異なった味になる。

同じカベルネ・ソーヴィニヨン種でもイタリアとフランス、またはチリやカリフォルニアでは、まったく違う味になるし、なんなら同じ国でも畑が違えば味は違うのと同じだ。

そこからさらに、ワイン醸造の工程があるのだから、世の中にあれほどの種類のワインがあってそれぞれに味が違うのも当然だ。

コーヒー豆も同様に、国や生産者で随分味が違う。

そしてコーヒーには「焙煎」という工程がある。

コーヒー豆を緑色の生の状態のまま粉砕して舐めてみれば酸っぱい味がする。

極端に深く焙煎してしまえば、どんな産地の豆も炭になり、同じ苦さになるだろう。

産地で培われた風味を最大限残しながらも、嫌な酸っぱさを感じないようにして、カフェインをはじめとする香味成分を最大限引き出す。

これが焙煎という作業の究極の目的だと、僕は思う。

だから僕にとっての究極のコーヒーは、酸っぱくも苦くもないコーヒーなのである。

さて、振り出しに戻ってしまった。


かくもコーヒーの味を言語化するのは難しい。だからもう少しだけお付き合いいただいて、僕が自分の店のコーヒー・ラインナップをどのように決めたのかをお話しさせていただこうと思う。

アラビカ種のコーヒー豆はエチオピアのアビシニア高原を起源とする。当地ではコーヒーの香りを「花束を抱えたような」と形容するそうだ。

赤道を挟んで南に位置するタンザニアもコーヒーの大産地だが、当地では「柑橘の香」と評される。

両者とも「酸味」寄りの表現だが、随分ニュアンスが違う。酸っぱくも苦くもない「完煎」の状態にして飲んでみると、上手く言葉にはできないが、確かに風味が違うのだ。

この違いを知ってもらうことが、コーヒーの味を体で理解する道標になるのではないか、という閃きに僕は興奮し、確信した。

その確信はいつか、これをブレンドすることで、もっとコーヒーそのものの理解に道を拓くものができるのでは、という思いに変わっていった。

結局酸味寄りの腰高な味に重心を持たせる意味で、落ち着きのある苦味寄りのアジアのコーヒーを探して、ブルーマウンテン(ジャマイカ)の苗を宣教師が移植したというパプア・ニューギニアのコーヒーにたどり着き、この3種の配合で、お店の看板ブレンド『ジリオブレンド』を作った。

もし良さそうなお店を見つけたら、「お店のブレンド」をください、と言ってみてほしい。きっと店主さんの思いが詰まったコーヒーが飲めると思うから。そしてその味を起点にしてお店とお話をしてみてほしい。

それがきっと自分好みのコーヒーを見つける第一歩になるはずです。



次回、いよいよ抽出に入っていきます!

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以下、蛇足的うんちく

お店で売っているのは概ね「アラビカ種」である、と書いたが、正しくは、アカネ科コーヒーノキ属アラビカコーヒーノキ種のこと。栽培品種としてはもうひとつ、アカネ科コーヒーノキ属ロブスタコーヒーノキ種というのがあって、この2種で99%を占める。

コーヒーの世界に分け入っていくと、ブルボンとかティピカとかゲイシャとか品種らしき名称に出会うことになるが、自然、あるいは人為的な交雑によって明らかに味の違う栽培品目(亜種)に付けられた名称で、どちらかというとこちらの方が、味を判断するのに便利な指標と言える。

本稿に書いたように、起源のコーヒーへのリスペクトが僕のコーヒー選びの基本的な姿勢なので、古い品種である、ティピカ、ブルボンを中心に豆を選択している。

エチオピアのゲシャ村で発見された古い突然変異種であるゲイシャ種も以前力を入れて取り扱っていたが、パナマの農園が大ヒットさせて以来めっきり入手しにくくなってしまった。

新しい品種にもいいものがある。東ティモールという新しい国で栽培している「ティモール・ハイブリッド」という交雑種は、洗練と荒々しさを兼ね備えた面白い味だった。こちらはフェア・トレードが乗り出してきて以来、価格が上がってしまい、マイクロロースターで扱うのが難しくなってしまった。

2022年2月22日火曜日

シリーズ:美味しいコーヒーを淹れよう 【1】まずは「新鮮な」豆を手に入れる

コンビニでも美味しいコーヒーが提供されるようになって久しい。

しかし、コーヒーの美味しさの中には、コーヒーを「淹れる」という行為そのものが含まれているような気がする。

そしてコーヒーを淹れるという行為は、豊かな生活の一部であるような気もする。

そんなわけで、美味しいコーヒーを淹れるために必要な手順をまとめておきたいと思う。


まずは、美味しいコーヒー豆がなくては話が始まらない。

最低条件がある。

それは「焙煎からの日数」だ。

僕らがコーヒーを味わうとき、その味わいのすべては、焙煎という工程で焼成された700種類ほどの化学物質から出来ている。










そしてそのカフェインを中心とした味わいの素は、時間と共に失われ、一週間で60%ほどになってしまう。

またその間に「酸化」という化学変化に見舞われ、味そのものの劣化と胸焼けの原因となる。

それらの変化は、冷蔵(冷凍)保存によってずいぶん抑えることができるが、一般的に流通のフェイズでそのような配慮をされたコーヒー豆は稀だ。

本来野菜や肉魚のような流通ラインに乗るべき商品だが、悲しいかな、食中毒のリスクがほぼないコーヒー豆をコストのかかる低温輸送のラインに載せる人はほとんどいない。


というわけで初回から身も蓋もない結論で恐縮だが、「新鮮な」コーヒー豆を入手するためには、「新鮮な」コーヒー豆を販売しているお店を見つけるしかない、ということになる。

一般に「自家焙煎」の暖簾を掲げるお店では、「新鮮な」コーヒー豆を入手できる可能性が高いので、ご自身の生活動線の中でお店を探してみてください。

もちろん、カフェジリオでは毎日「新鮮な」コーヒー豆を販売しております。(詳細は下記リンクよりどうぞ。宣伝かよ!)

カフェジリオGoogle Map











次回は

自分好みの豆を見つけよう

の予定です


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以下、蛇足的うんちく

もちろん、自分で焙煎する、という究極の手段もあるにはあるが、どうしてもある程度のエアーボリュームを使って焙煎しないと、繊細なコーヒーの味を作ることは難しい。

となると、高価な中型以上の焙煎機が必要となってしまい、かなり非現実的だ。

「銀杏煎り」や手回し式の小型ロースターで焙煎することには、手作りをする楽しみそのものがあって、それはそれでとても価値のある趣味だと思うが、それではどうしても届かない場所がある。

表面近くを焦がさずに中心まで火を通すことと、一定時間高熱を与えて高い香味を引き出すことを両立させる二律背反こそが、コーヒー豆焙煎の本質だからだ。


2018年1月22日月曜日

ペーパーフィルターにまつわる誤解

最近お客さまに、白いペーパーは漂白剤の匂いが気になるので無漂白のもの(みさらし)の方がいいですよね?と訊かれた。

そう、世の中には白いペーパーフィルターと茶色のペーパーフィルターが存在する。
一般的に同じブランドのものだと無漂白の方が少し高価なので、そちらのほうがいい、という先入観を産むのだろうか。

なぜ無漂白のほうが高価なのか。
それは、木材からリグニンという物質を取り去るために、漂白剤ではなく、大量の水で洗い流すためコストが嵩むからだという。
そうしてなお、取りきれず残ったリグニンの色があの「茶色」なのである。

まず今回の話の起点となった「匂い」についてだが、その意味では無漂白ペーパーフィルターにこそ「木」の匂いが残っている。

漂白されたペーパーフィルターに「匂い」がありそうな気がするのは、おそらく「漂白」という名称から次亜塩素酸ナトリウムの匂いを連想しているのかもしれない。
しかし現在、(ペーパーフィルターに限らず)紙を塩素漂白で白くしているところはほとんどないのだ。
漂白の過程で生成される有機塩素化合物がダイオキシンの原因物質となるため、世界的に酸素系漂白法への転換が進んでいるのである。
ということは、むしろ匂いが気になるのは無漂白パルプから作られたものではないだろうか。

件のお客さまは、匂いが気になるので白いペーパーを使う時には抽出前にお湯をかけたほうがいいか、と重ねて訊いたが、むしろ無漂白のペーパーをお使いのかたは、使用前にお湯をかけてみてほしい。
ものによっては、溶け出したリグニンが混じった茶色いお湯が出てくるはずだ。


パルプの酸素漂白への転換がはじまったのは、比較的最近のことで、1998年頃だそうだ。
それ以前の時期に、健康志向の高まりに合わせて無漂白ペーパーフィルターが生まれた。
すでにほぼ酸素漂白への転換が終わった今もこれが残っているのは、ひとえに「味が違う」からである。

無漂白パルプから生まれる紙はリグニンが残っているため丈夫で、重い物を入れる袋などに使われる。
残存リグニンから出るかすかな木の香りと、緊密な紙質が抽出に影響を与えるのだろう。
その差は微々たるものかもしれないが、微々たる違いを追い込んでこその趣味とも言える。

しかし木を見て森を見ず、になっては面倒な手数をかけてコーヒーを淹れる甲斐がない。
焙煎によって生じた多くの香味成分の複雑なバランスを、なるべく純粋な形で味わうならやはり、ペーパーは漂白されたペーパーのほうがいいと思う。


2018年1月2日火曜日

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。
今年も2日より営業をはじめました。
よろしくお願いいたします。



店を始める前は3年に一度くらいイタリアに行っていたので、コーヒーの修行を始めた時もエスプレッソは必須だろうと思い、堀口珈琲工房さんのエスプレッソ教室に行ってみた。
そこで出会ったのが、パヴォーニの手動式エスプレッソマシンだった。


007の映画でジェームス・ボンドがコーヒーを淹れるのに使っていたのを思い出して自分でも買ってみたが、絶対的ワンオペの個人店では運用が難しいし、コーヒーの味の複雑さがわかってくるとエスプレッソなんかは飲めなくなるもので、自分も興味を持てなくなって今はもっぱら飾りとなっている。

時折このエスプレッソマシンをきっかけに007の話になったりするから、どの映画に出てたんだったか確かめようと順番に観ていったことがある。
僕の記憶の中ではこのマシンを使っていたのは絶対にショーン・コネリーだったわけだが、ショーン・コネリー期の作品には該当するシーンが見当たらなかった。
意地になってロジャー・ムーア期のものにあたってみると、主演交代の一作目「死ぬのは奴らだ」の冒頭に出て来るではないか。

ぜったいにそうだと思っていた強固な記憶が、実はそうではなかった、ということは、この歳になって同窓会なんかに出席するとよく出くわす案件だが、別に悪いことでもないと思う。
それはきっと、たくさんの経験がいろいろに作用しあって、他の誰とも違う今の自分が出来ているという証なのであって、その自分にしか出来ないことがきっとあるということだと思うから。

今年もいろいろ記憶違いからいい加減なことを言うと思いますが、その分だけ<ここにしかない>度の高い味をご提供していきたいと思っています。
ぜひよろしくお願いいたします。

2017年9月29日金曜日

煎じ詰めて言えば、コーヒー屋の仕事の要衝は旨い“ブレンド”を作ることにあるんじゃないだろうか

先日とあるカフェにお邪魔して、「ブレンドを」とお願いしたら、
「お客さまの好みにブレンドをお作りします。どんな味がいいですか」
と言われた。

その設定は想定外だったので慌てたが、すぐに頭に浮かんだのは、“コーヒーの神様”襟立氏のご子息が山の手で営んでおられた「リヒト」で、すべてのコーヒー豆のプライスタグに書かれていた、
酸っぱくも苦くもありません
という言葉だった。

しかしその当のリヒト店主が、客が少しでもコーヒー通ぶったことを言うと、とたんに不機嫌になったことも同時に思い出し、「あんまり苦くないほうがいいんですが、酸っぱいっていうのもちょっと苦手で・・」と、しどろもどろな感じでお願いしてみた。
まあじゃあ、バランス重視って感じですかね、と言って作ってくださったブレンドはかなり強い酸味のコーヒーだった。

味覚という官能評価は人によってだいぶ違う。
そして極めて言葉にしにくいのがコーヒーの味だ。
だからお客さまのお好みを伺って、それに応える味を作るのは実に難しい。
だから、自分が美味しいと思う味を、その店のメートル原器にして、そこを起点に味のバリエーションを作るのが王道だ、と最後に師事したお師匠さんに教わった。


それに、僕の10年の経験から言って、そう簡単にブレンドは出来ない。
まず実現したい味のイメージがなければ、なんのためにブレンドを作るのかわからない。
と言ったって、実現したい味のイメージなんて考えて浮かぶもんじゃないし、カタログに書いてあるセールス・コピーの一般論も、もちろんあてにならない。
自分で経験したことしか信じられないのがコーヒーの世界だと思う。

コーヒーの勉強をはじめたばかりの頃、頭でっかちの僕はコーヒーの起源の地であるエチオピア産の豆を飲み比べて歩いた。
酸っぱいお店が多かったが、門前仲町のピコというお店のエチオピアはとても柔らかくて綺麗な味だった。

ピコのマスターがやっていたコーヒー教室に参加して、KONO式の器具に出会い、あまりの味の違いにびっくりして、KONOコーヒー塾の門を叩いた。
そこで社長の淹れてくれたエチオピアの味ときたら!

そうか、これが酸っぱいとは違うコーヒーの酸味か、と気がついたが、これやっぱり結構な経験を積まないと気付けない味だな、とも思った。
だから自分の最初のブレンドは、はじめて飲んだ人にもわかる、「酸味の誤解」を解くコーヒーを作りたい、と思ったのだ。

試行錯誤、紆余曲折の結果、途中段階で開業し、4年目にしてやっと今のカタチの「ジリオブレンド」が完成した。
今日も朝から、そのブレンドの構成豆を焙煎した。


ゲイシャ種なんて珍しいですね、とか、ここのグァテマラは旨いね、とか、もちろんうれしくないことはないけれど、豆の選定から、焙煎度の吟味からやって、頭にあるコーヒーのイメージを作ったブレンドを、常連さんから「お宅のコーヒー」と言われるのが、コーヒー屋としてなにより嬉しい。
煎じ詰めて言えば、コーヒー屋の仕事の要衝は旨い“ブレンド”を作ることにあるんじゃないだろうか

2017年8月25日金曜日

オリジンとオリジナリティ

19世紀中頃のフランスで生まれたシブースト・クリームは、カスタードクリームとゼラチンとイタリアン・メレンゲを合わせ、ふんわりした食感をケーキの世界にもたらした画期的なクリームです。
現代でケーキによく使われるようになったムース・ババロア系の原型ともいえるものです。

代表的なケーキが、その名も「シブースト」
うちでは「りんごのシブスト」の名前で、秋から冬にかけてお作りしています。

りんごのシブスト
 そして今日は同時に、その直系の発展形「ババロア」もお出ししています。
「マスカルポーネチーズとレモンのババロア」です。
マスカルポーネチーズとレモンのババロア
ケーキにも歴史があります。
個人の才能によって表出されると思われがちなオリジナリティも、実際には長い時間をかけて積み上げられた先人の業績の上に築かれているんだなあ、と感じます。

2017年8月24日木曜日

すべては鮮度のために

今日は不安定な天気の札幌です。
雨の日はすこし仕上がりがスモーキーになるような気がして、焙煎は避けるのですが、さすがに看板ブレンドが品切れでは営業できません。

ジリオブレンドを構成する「エチオピア」「タンザニア」「パプアニューギニア」を焙煎しました。

エチオピア イルガチェフェ WASH

タンザニア アデラAA

パプアニューギニア シグリAA
豆の選択は、いろいろ試行錯誤をして、結局三種とも、最後の焙煎の師匠中野弘志さんの教えてくださった豆になりました。
他の焙煎所で教えていただいた豆は、いいものもあったのですが一般に供給の安定度が低く、代わりの豆を選んではその都度焙煎度の調整をしなくてはなりませんし、思った味にならないものもありました。
その点、この三ブランドは、この10年概ね安定した供給を受けられています。

鮮度のことを考えると、少しずつブレンドして、ストレート用の豆がなくなった時にブレンドの中に混ぜ込んだ古い豆が残らないようにしています。
ゆえに、ご注文いただいてから、やおらブレンドをはじめたりして少し時間がかかることがありますが、すべては鮮度のためにやっていることですのでご容赦ください。

2017年8月23日水曜日

面陳と背刺し

昨日の肌寒い雨で夏も終わったか、と思ったらさっそく厳しい残暑の札幌です。

今朝は「マラウイ」と「エルサルバドル」の焙煎をしておりました。

マラウイ・ミスク・チノンゴAA

エルサルバドル・サンタ・リタ農園
マラウイはアフリカはタンザニアの東隣に位置する小国です。
パナマのエスメラルダ農園で、耳慣れない「ゲイシャ」という品種の豆がカップ・オブ・エクセレンスを受賞して話題になりましたが、そのずっと前からゲイシャ種を栽培していた国です。
もとは、エチオピアのゲシャ村で発見された変異種ですね。
古い品種ならではのパンチの効いた味が魅力です。

グァテマラの隣国エルサルバドルのサンタ・リタ農園は、中米ではもう作っているところの少なくなったブルボン種を丁寧に作り続けている数少ない農園のひとつ。最近ハイブリッドの栽培品種が増え、味の濁りが感じられるようになったグァテマラのセカンド・チョイスとしてお勧めできます。

この二種のコーヒーは今年のカフェジリオ開店10周年記念リニューアルで、新たにレギュラー入りした豆なのですが、それまでも月替りで特設コーナーに置いて販売していました。
不思議なことに、出せば必ず買っていかれたお客さまも、なぜかレギュラー商品になると、ご案内してもお買いにならなくなります。
 書店ではよく知られる「面陳」効果です。
棚に陳列するさい、表紙が見えるように並べるのを「面陳」、背表紙が見えるように並べるのを「背刺し」といいますが、こんなことで驚くほど売れ行きが違うそうです。

先日もレンタルDVD店で、中井貴一さんの「グッドモーニング・ショー」という映画が新作コーナーに面陳されていて、それがいつ行っても全巻レンタル中でした。
こんなに人気があるならもっと入荷すればいいのに、と思っていたのですが、二週間後背刺しに移行した瞬間から一巻も借りられていない、という気の毒にもわかり易すぎる結果になっていました。

純粋に味だけでコーヒーを選んで欲しい、という想いから原価にかかわらず価格だって500円に統一しているのです。面陳だから売れる、というのでは悲しい。
きっとその肝心の味がうまく伝えられていないのでしょう。

しかし、これが難しい。
コーヒーの神様、と呼ばれた襟立氏(伝説の名店「もか」の標さんのお師匠さん)のご長男がやっておられた宮の森の「リヒト」(現在は閉店)では、すべてのコーヒー豆の説明書きに、「苦くも酸っぱくもありません」とだけ書かれていました。
知れば知る程、言葉にできなくなるのが珈琲の味なんです。
ましてや酸っぱいとか苦いとかは、焙煎度の差に過ぎず、本来のコーヒーの属性ではない。

今は、「ローストナッツ」や「チョコレート」「花」「柑橘」といったアロマの傾向で表現するのが主流ですが、これも飲み慣れない人には伝わりにくいですし、少なくない人がそういうフレーバーを付けたコーヒーと勘違いされたりします。なにかうまい方法はないものか、もう少し考えてみたいと思います。

2017年8月22日火曜日

夏の終わり

今日は札幌は雨。

また蒸し暑さが戻ってきましたが、もうすぐ夏も終わりですね。
お客さまが、わたくしどもの店名にちなんで、ユリの花(イタリア語でGiglio)を持ってきてくださいました。


例年夏には「いちじくのタルト」をお待ちいただいておりましたが、今年いちじくの不作で、短期間しかお出しすることができませんでした。
替わりにお出ししました「桃のショートケーキ」は大変ご好評いただき、見事リリーフエースをつとめてくれました。
その桃もそろそろ終わりです。


 この夏もうひとつの主役がこのムースでした。

入荷するフルーツの出来に合わせて、こまかく中身の変わるムースです。
酸味のある赤い果実と黄色い果実を組み合わせて、たっぷりの果物と一緒にムースに仕立てています。


まもなく、「スイートポテト」や「りんごのシブースト」といった秋のケーキへの切り替えがはじまります。

2017年7月17日月曜日

ドリッパーの選び方

お店ではKONOの新型ドリッパー(コーノ式では「フィルタ」といいます)MDK-21を愛用している。
もともとは2015年のコーノ90周年に合わせて発売された記念モデルを、再発売したもの。
しばらく在庫切れになっていたが、復活したようなので再度ご紹介します。


開発元のコーヒーサイフォン株式会社のオンラインショップで買えます。
→珈琲サイフォン株式会社 Webショップ

新型のポイントは、中央にある「リブ」が極めて短いというところ。



最下部から上に伸びている「畝」のようなものがリブで、この部分だけペーパーと器具が圧着されず空気が通ってコーヒー液をサーバーに導く役割をする。
左が前モデルのMDN型で、右側のMDK-21に比べると明らかに「畝」が長いのがわかるだろう。
抽出において、これがどういう差を生むのかというと、
リブが長ければ落ちやすく、短ければ落ちにくくなるのである。


落ちにくい器具では、じっくり抽出されるため味が濃く出る。
が、少しずつ注湯しないと、すぐに溢れてしまうため注湯作業は格段に難しくなる。
だからMDN型を選ぶかMDK型を選ぶかは、味と作業難易度とのトレードオフということになる。

もうひとつ、実に好対照というべき製品があって、それがハリオV60。



リブがフィルタの全体を覆うように入っているのがわかるだろう。
お湯は入れた量に素直に追随して落ちていく。
作業的には非常にスムースで、判断に迷うことがない。
ゆっくりと湯を注ぎ続けることができれば、現在のドリップ系の器具の中で最も作業の楽な手段かもしれない。

さらにこのガラス製のモデルは実にスタイリッシュだ。


そのうえAmazonで買える。
そういう意味でもスタイリッシュ。

ちなみにコーノとハリオのペーパーは完全互換で、どちらのものも使える。
入手しやすい方を使えばいいだろう。

で、正直なところ書いている僕も、ここに挙げた三種のフィルタで、それほど味の差はないと思っている。
この仕事を始めた頃は、そりゃコーノ一択でしょ、と思っていたが、だんだんどの器具でも同じ味に入れられるようになってきた。

器具の違いは結局作業上の「感触」の違いのようなものだから、直感で選んでいいと思う。
好みのデザインとか、プロっぽい感じとか。

その後、使って慣れて自分の味を作っていく。
そういう感じでいいと思う。


2017年7月15日土曜日

ミルなら、KalitaのナイスカットGを買えばいいと思うよ

コーヒーのことでお客さまから質問を受けることが多い。
一番多いのは、抽出のための器具のことだが、時々、ミルはどれがいいでしょうという質問を受ける。

2007年に開店してしばらくの間、この質問には簡単に答えることができた。
Kalitaのナイスカットミルを買ってください。
これでオーケー。
実際お店で自分が使っていたこの製品は、 そのくらい優れていた。

詳しくはこちらの記事を

→コーヒーエンジニアリングの時代と、アイスコーヒーの真理

ところがこの製品、
売れば売るほど赤字になる
というよく聞く理由で廃番になってしまった。

ちょっと話は逸れるが、お店をやっていてこのセリフを何度聞いたか、考えると憂鬱になる。
主に乳製品でこのセリフをよく聞いた。
オーム乳業のクレーム・ドゥーブル、牧家の牛乳「草香る」、森永の「FH40」生クリーム・・・

みな口を揃えて「売れば売るほど赤字になる」と言ったものだ。
もしそれが本当の理由なら最適解は「値上げ」をすることだろうから、実際は、工場運営の問題や、原材料の安定的確保などの問題などが複合的にあって、廃番に踏み切ったのだろう。
でもそんな現実的で世知辛い話よりは、企業の良心をアピールできる「売れば売るほど赤字になる」のほうが、言う方も楽だし、耳にも心地よい。
聞き流してあげるのが大人というものだ。

話を戻す。
カリタがナイスカットミルをやめて、出した商品がナイスカットミル・ネクストGで、静電気除去装置付で、正価では約6万円。
とうてい家庭用に簡単に買える金額ではなく、業務用としても少し躊躇する。

カリタ ネクストG 電動ミル アーミーグリーン 61090
Kalita (カリタ)
売り上げランキング: 20,453

当然市場は、反発。ナイスカットミルのストレートな後継機を待ち望んでいた。
そして、
そして、
そしてやっと、
やっと出ました、後継機。ナイスカットGです。

カリタ ナイスカットG アイボリー #61102
Kalita (カリタ) (2017-03-13)
売り上げランキング: 14,654

わー、パチパチパチ。
これで「あのー、ミルは・・」と聞かれたとき、にっこり笑って、
カリタのナイスカットGを買ってください
と言える。
すでに実売3万円を切っていますね。
前モデルは最安で2万円弱までいきましたが、そうなるとまたヤメルとか言い出すから、適正価格で長く販売してほしいです。

で、タイミングよく、東京の知人からTwitterのDMでミルの質問があったので、ナイスカットGをお勧めしたらさっそく買って、大満足だそうです。

よかった、よかった。

2017年7月13日木曜日

ココアクッキー三種、新登場です。

レギュラー商品のアーモンドココア・クッキーに、新しい仲間が増えました。


時計回りに上から
「オートミール・ココアクッキー」
「チョコチップ・ココアクッキー」
「くるみココアクッキー」
です。

直径約7センチの大判クッキー。
一枚130円。
数量限定でのご提供です。


ルバーブと赤い実のムース、できました。

新しいケーキのご紹介です。
『ルバーブと赤い実のムース』
410円です。

知っている人は知っているが、知らない人は知らないお菓子の材料が「ルバーブ」という植物。

ルバーブは、特有の香りと酸味を持つタデ科の野菜です。見た目はフキのようですが、加熱すると短時間で溶けてしまうため、一般的な料理にはあまり使われず、おもにジャムやお菓子作りなどに使われます。食用にするのは30~40cmほどの葉柄(軸)の部分のみ。実際はフキのように大きな葉がついていますが、ルバーブの葉には毒性があるため食べられません。そのため店頭では軸の部分だけで売られています。ちなみにフキはキク科で、ルバーブはタデ科なので両者は仲間ではありません。北海道や長野県など涼しい地域で栽培されているほか、オランダなどからも輸入されています。国内産のものは5月から9月頃が収穫時期で、初夏のものは酸味が強く、秋になると酸味がやわらいできます。(「野菜ナビ」より)

そうです。北海道で作られているんですね。
もちろんこちらも道産品を使ってます。
爽やかな酸味のあるムースに仕上がっています。

季節のフルーツをたっぷり載せています。

2017年7月7日金曜日

札幌市の国際会議場新設案件に寄せて

今朝の北海道新聞朝刊に、パークホテルに国際会議場を設置する構想が載っていた。

















MICEの誘致が目的らしい。
MICEというのは、官公庁のHPに、こう説明されている。
企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称です。
つまり札幌市主導で、民間企業であるパークホテルに、MICE誘致を見越した協業をもちかけている、ということなのだろう。高層階から観る中島公園の景観は見事で、本案件の候補地としては申し分ない。
観光業というのは本来集客装置で、集まった人々が消費する産業がセットになっていなくてはならないが、その受け皿として「ススキノ」という飲食店街をセットできるのも、確かに目的に適っていると思われる。


札幌市はこのような官民協業には実績があって、北海道日本ハムファイターズの誘致はその最も成功した例のひとつだと思う。

気になるのは、その2001年から16年も続いた協業がここにきて、ほぼ確実に終焉を迎えるのが決まっているということだが、これもファイターズの集客力が企業の投資を促すほどに成長したという証で、札幌市が目指したプロスポーツの誘致による地域活性が成功をおさめたことを示している。

その意味では、多少広さが希望に合わないからといって、北広島市に本拠を移すというのは少し商業人としての仁義に欠けているのでは、と思わなくもないが、その非情さもまた現代のビジネス的ではある。

このような協業は、こうした先の読めなさと常に背中合わせだ。
現場でこういうタフな交渉ができる人材を、役所が採用できているか、また育成できているか、が成功の鍵を握るような気がする。

2017年7月6日木曜日

こむら返り part-2

以前、このブログでこむら返りについて書いた。
2014.10.15「こむら返り」

そこでも引用したが、こむら返りの原因にはいろいろあって、個々の特定は難しいがその正体を煎じ詰めて言うなら、
運動中のこむら返りは、脳から出された信号が運動神経に伝達される過程で異常を起こし、筋肉が過剰に収縮してしまうことが原因ですが、睡眠中の場合も同様のメカニズムで発生します。(http://atakin.jp/e00koram/e04komura.html)
こういうことでいいと思う。
引用した元記事では、その予防法として、
水分や電化質や塩分の補給も重要ですので、飲み物(スポーツドリンクやクエン酸を含んだもの等)で補うとより効果的
とあり、Facebookで友人からも同様のアドバイスをもらったこともあって、試してみたらこれがよく効いた。
おかげでずいぶん頻度は落ちたが、それでも時々痙攣の予兆に襲われることがある。

たいへん有り難いことだが、お店には私なんぞと話をしたくて訪れてくださるお客さまがいらっしゃって、短い方でも30分から1時間。長い方だと3時間にわたってお話される方も。

一日に数名重なると、けっこうな時間立ちっぱなしになって、そんな夜はストレッチなどをしておくよう心がけるが、それでもこむら返りが起きたりする。

しかし、人間の体というのは凄いものだ。
そんな時にも、意識の外で自然に対処法を編み出してしまう。
ある夜、こむら返りの予兆を感じて目が覚めた時、ほとんど何も考えずにベッドの横にすっと直立姿勢のまま降りたら、そのまま「すうっ」と音もなくこむら返りの予兆が去っていったのだ。

もちろん医学的な根拠などわからない。
しかし、前出の記事にも
夜間の睡眠中に起こるこむら返りですが、睡眠中は脚が伸びてふくらはぎの部分が収縮している状態になっているので、運動神経の誤動作によってこむら返りが起きやすい状態になっています。
とあるので、この「起きやすい」状況が解消されることが一義的には効いているのだろう。
睡眠中に予兆を感じ取って行動に移せるか、というところに難しさはあるが、それ以降、なんどもこの「直立姿勢でベッドから降りる」というシンプルな対処がこむら返りを未然に防いでくれた。

布団で寝ている人には使えないという難点もあるし、そもそも万人に効く対処はないということだから、 やってみたが効果がなかったというクレームにはお応えしかねるが、あくまでも個人的体験として、こむら返りが持つ、「神経の誤作動が自分を裏切る」という恐怖感から解放された喜びについて述べさせていただいた。
御清聴ありがとうございました。

2017年6月28日水曜日

焙煎のこと

美味しいコーヒーを淹れるための第一歩は、良い豆を手に入れることに尽きる。
では「良い豆」とは何か。

鮮度の問題は大きい。
焙煎によって作られた香味成分は日を追うにつれて分解していってしまうからで、一週間も経てば半分以上が無くなってしまう。
しかし、ということは、そもそもその香味成分が上手く焙煎によって焼成されていなければ、最初から話にならないというだ。

というわけで、良い豆のもっとも重要な要件は上手に焙煎された豆である、とここでは定義してしまおう。

何が上手な焙煎かということに関しては、ここまでの論展開で明らかなように、豆が持つ香味成分を最大限に焼成できていること、と決まる。

調理の基本に照らせば、豆の加熱の肝は、ひとつの鍋(焙煎の場合には釜)に加える総熱量と、一つ一つの豆の中心部まで熱が届くまでのスピードが、どうバランスしているか、ということになる。
このバランスを取るために媒介としての液体(水であったり、スープだったり)の量や浸透性を調整したり、鍋の形状や素材などを工夫してきたのが調理の歴史である。

コーヒー豆の場合はシンプルで、そもそも水に入れるわけにはいかないのだから、そのまま加熱するしかない。
調整のための媒介を介在させられない、というところがコーヒー豆の焙煎が難しいところなのだ。

またコーヒー豆はとても硬いので、火が通りにくい。全体の熱量をかなり高くする必要があるのだ。
だから普通に鍋で加熱でもしようものなら、表面が焦げて芯が生のまま、という豆が出来上がる。
そのために回転ドラムの中で豆を泳がせ、空気で加熱するという焙煎機の原理が生まれたわけだ。


普通に考えれば、与えるべき熱量と豆の中心まで熱が入るスピードを調整するためには火力を調整すればいい、ということになるだろうが、それもそう簡単にはいかない事情がある。
必要な熱量を与えるのに、時間を長く取る、つまり弱火に頼る、ということがコーヒー豆の焙煎では出来ないのだ。
それは800種類もの香味成分を焼成させる焙煎では、デンプンをアルファ化するような、火が通ればいいという単純さを適用できないからだ。
どうしても一定の強い火力で炙る過程が必要になる。


くどくどと書いてきたわりに結論がシンプルでまったく恐縮なのだが、つまり、焙煎はまとまった量でやらないと美味しくならないのである。

だからといって大量に焙煎すると、鮮度が落ちて、スカスカな味のコーヒーを売ることになってしまう。
だから芯残りのない焙煎のできる最少量を試行錯誤で探って日々焙煎しているのです。
今のところ、9種類の豆をそれぞれ1キロずつ焙煎していく、というのが味と販売量のバランス点になっているようです。

2017年5月16日火曜日

時間旅行なんて簡単なのさ

センパイにお借りしている『植草甚一コラージュ日記』を読んでいたら、
「ヒサモトでコーヒーとケーキ」
という記述を見つけた。


ヒサモトというのは、家内が東京で修行した三軒茶屋のお店だが、70年代後半にはまだ田園都市線沿線にたくさんの支店を持っていた時代。

レシピは変わってないから、いまウチで作っているショートケーキを植草甚一さんも召し上がられたのかなあ、などと想像したら、見慣れた店内ごと70年代に運ばれたような気がした。

一瞬でいいなら時間旅行なんてわりと簡単なもんだ。

そういえば、東京でヒサモトのショートケーキのファンだったという人が、わざわざ北海道旅行の旅程にウチの店を組み込んで来てくれたりしてたなあ。
あの人も、もう今はないヒサモトのショートケーキを食べて、時空を超えるオプショナルツアーを体験したってことなんだな、きっと。

植草甚一コラージュ日記〈1〉東京1976
植草 甚一
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