2012年10月4日木曜日

おいしいコーヒーのいれ方 part-6 続・コーノ式の正しい使い方

さあ、お湯と粉は準備ができた。さっそく入れてみよう。フィルタにペーパーをセットしてその中に入れる。そしてここが最初のポイントだが、粉を出来るだけ平らにしよう。左右に、えっそんなに?というくらい強く速く振ると平らになる。これはとても大事なので何度も練習しよう 


平らになったら、お湯を注ぐ。ここで第二のポイントだが、正確に真ん中にだけ、あくまでも「滴(しずく)」をぽたぽたたらすのだ。そうすると、粉が新鮮なものであれば、炭酸ガスが発生し膨らんでくる。



真ん中にハンバーグみたいなのが乗っているのがみえるだろうか。これが外周部に達するまでポットを回さずにただひたすらに真ん中にポタポタやり続ける。と、こうなる。


外周部に達した時、コーヒーの最初の一滴がぽとりと落ちるのが理想。均等に広がらないと先に外側を伝って薄い液が落ちてしまう。あくまでも中心部の「長い」距離を使ってコーヒーのエキス分を抽出したいのだ。だから厳密に表面を平らにしておく必要があったというわけ。またこの膨らみは湯をその全体に抱え込んでじっくりフィルタ内の粉全体に湯を行き渡らせる役割を担っており、その意味でも豆の鮮度や、挽きたてであることが重要なのだ。

さて、この時、一般に言われているような「蒸らし」は絶対にしてはいけない。一度湯に漬けた粉を放置しておくのは灰汁成分の発生を助長するので厳禁だ。500円玉くらいの大きさを目処に中心から「の」の字を書くようにポットを回しながらお湯を入れていく。40%くらいの量まではゆっくりと、それ以降は少しお湯を多めにして入れていく。湯面が、フィルタの一番上から下に下がらないように、常にお湯がいっぱいフィルタに入ったままにしておくのだ。結果的に、スピードを変化させながら間断なく湯を注ぎ続けることになる。この加減でも味が変わっていく。最後までゆっくり入れていると、苦味の勝った味になる。一度にたくさん入れると味が薄まる。このあたりは試行錯誤でやっていくしかないだろう。

そして欲しい量が抽出できたら、湯がいっぱい入った状態で外す。



塾ではカップを用意しておいてそこに移動させたが、サーバーを持って流しの上で外してもいいだろう。

しばらくすると、湯が全部おちて粉が姿を現す。



このようにきれいなスリコギ状になれば成功。ゆっくり入れすぎると平らになってしまい、美味しい部分が抽出不足で苦味の勝った味になってしまう。真ん中に白く見えているのが灰汁だ。これをサーバーに落とさないために間断なく湯を注いできたのだ。



これでコーノ式コーヒーが完成した。
カリタもメリタもこのやり方で今までよりも純度の高いコーヒーが抽出できると思う。ドリップ系の器具をお持ちの方はぜひためしてみていただきたい。

次回はドリップ以外ではメジャーなサイフォンとフレンチプレスについて(ごく)簡単に(ではあるが)ご説明したいと思う。

おいしいコーヒーのいれ方 part-5 コーノ式の正しい使い方

 さていよいよ実際にコーヒーを入れていこう。
前述したようにいろんな入れ方があるが、手始めにオススメした「コーノ式」を取り上げる。
会社を辞めてコーヒー修行をはじめて最初に本格的な指導を受けたのが、珈琲サイフォン株式会社の河野社長だった。コーノ式ドリッパーは現在の河野社長のお父様が作ったもので、社長は子供の頃から家でコーノ式ドリッパーを使って珈琲を入れていたそうだ。なにしろキャリアが違う。社長が珈琲を入れる手つきはまるで魔法かなにかを見ているようで実に美しい。出来上がったコーヒーも夢のように美味しい。しかし、珈琲サイフォン社では喫茶店は経営していないので、コーノ珈琲塾に入塾した者でないと、このおそらく日本で一番美味いコーヒーは飲めない。なんと勿体なくも貴重な体験であったことか。そしてこの社長の入れ方は特殊すぎて誰にも真似ができない。みんな真似しようとして失敗するが、社長はそれを見て「どうしてそうなっちゃうのかなあ」とおっしゃるだけ。たぶん自身には自然すぎて本当にどうして出来ないのかわからないのだ。
そこでは完全に入れ方をマスター出来なかった私は、そのドリッパーを作った先代に師事したという方が主宰するコーヒー研究会に入った。その方は見事にコーノ式の手順を言語化しており予想通り独自の手順を加えて補強していた。やっと再現可能な手順に出会ったので、これを一ヶ月ほど反復訓練して私の抽出法とした。今日からお話するのはこの手順である。

まず珈琲豆を挽こう。
もちろんお店で挽いてもらったっていいのだが、豆は挽くと表面積が800倍に増加する。つまり800倍のスピードで酸化するということだ。豆のままの方が断然保存性が高いのだ。酸化すると味が悪くなるのはもちろんだが、湯を注いだ時の炭酸ガスの発生量がガクッと落ちて、ガスで膨らんだ粉の中をお湯を回して抽出することが出来なくなり不利なのだ。
ミルを買うというのは、美味しい珈琲を飲むための投資としてはかなりプライオリティが高いと私は思う。
その際はいろいろ考えずに「カリタ・ナイスカット・ミル」という電動ミルを買おう。操作が簡便であること、性能、メンテナンス・フリーである点、どの点も申し分ない。一生モノであることを考えると価格も高くないと思う。なにしろ日常の道具なのだ。使い続けられるものを買うのが最も安いはずだ。
それにこの製品は、皆さんの粉に対しての最大の疑問、「どのくらいの挽目がいいの」に明快な回答をくれる。手動のミルや、臼の中で羽が回るようなタイプの電動ミルはどのくらいの時間刃を回すのかで細かさが決まるが、ナイスカットミルでは自動でダイヤルで指定した挽目にしてくれるのだ。
挽目で味はかなり変わる。だからこそ、先達が長い時間をかけて探り当てた適切な挽目である「中挽き」からきちんとした味を引き出す技術を習得すべきで最初から、ちょっと細挽きとかちょっと荒挽きとか、挽目を変えることで好みの味を探るのはやめておいた方がいいと思う。

轢いた粉

これが中挽きの粉だ。
さて、珈琲に関心の強い方はだいたい当店にいらっしゃると抽出手順が見えるカウンターにお座りになって手元をじっと見ておられる。そして多くの方は最初にこう質問されるのだ。
「一人分は何グラムですか?」と。
まず、ペーパードリップでは「一人分」で入れてはいけない、と申し上げておきたい。透過法は、重力の力を使って味を引き出す。だから縦方向の「長さ」が必要なのである。特に透過の合理性を追求して円錐を採用したコーノ式ではとくにその傾向が顕著で、一人分の粉では十分な味が出てくれない。二人分から入れましょう。
で、何グラムかだが、これは「器具の指示に従ってください」が答え。

写真を見て欲しい。
スクープ

代表的な珈琲器具に付属してくるスクープ(はい、そういう名前なのです)だが、それぞれグラム数が違う。手元になかったがメリタ式とフレンチプレス(浸漬法)は7g、カリタは10g、コーノとハリオは12gとなっている。
と、お答えすると、うちの器具にはスクープっていうのは付いてなかったなあ、というお客様が驚くほど多い。そういう志の低い器具は買い換えるべきではないか、と申し上げないが思ってしまう。

粉の用意と並行してお湯を沸かす。
必要な温度は90度以上で、沸騰するほど高温でないほうがいいことはすでに書いた。大事なことなので繰り返すが、油脂を加熱して乳化現象を起こし味の活性を図る手法なのだ。ボンゴレ・ビアンコの豊かなあさりの風味を引き出す手法と同じ。私は開店して6年目に至る現在でも温度計を使っている。ご家庭ではやかんの底からでてくる泡が走るくらいのスピードでタタタタと出てきたら90度と覚えておくといいだろう。

温度計

むろん温度計を使えるならそれに越したことはない。

さてそれをコーヒーポットに移す。

ポットお湯八分目

この時、何人分入れる場合でもポットの八分目までお湯を満たして欲しい。ポットを大きく傾けて湯を注ぐと水量のコントロールが難しいからだ。後述するが、お湯はポタポタと雫のカタチで注がなければならないから。

と、準備が整ったところで、以下次回とさせていただきたい。
いよいよ明日からフィルタに湯を注いでいきます。



おいしいコーヒーのいれ方 part-4 続・コーヒーの名前

 前回はついアフリカの豆の話で一回分まるまる使ってしまった。急ぎ足で続きを話そう。

世界で一番コーヒー豆をたくさん作っている国は「ブラジル」である。アメリカという大消費地のお膝元で、国をあげて良質なコーヒーの生産を目指している。国立の「クラシフィカドール」という珈琲鑑定士の学校があったり、「カップ・オブ・エクセレンス」という世界的に注目される品評会も運営している。この巨大になったブラジルのコーヒー産業も、もとはブラジル政府の政策に共感した日本の移民団が大量に移民して開墾した畑が元になっていて、この時の移民団を派遣した水野さんという方に感謝の意を表して、長い間ブラジル政府は無償で大量のコーヒー豆を日本に提供してくれていて、その時水野さんが作ったのが「カフェ・パウリスタ」で・・・なんて、話していると今日はブラジルで終わってしまう。味の話をしよう。
ブラジルに限らず、中南部のコーヒー豆はその地質を反映して、表皮部分が柔らかく内部まで火が通りやすいため、うっかり焼くと苦くなる傾向がある。それでブラジル=苦いコーヒーというイメージになるのだが、皮が薄いので雑味の少ない味で、はっきりと苦さが伝わってくるのも、こういったイメージ醸成に一役買っている。ブラジルでは、コーヒーの生産地では珍しく水を豊富に使えるので水洗式という方法で実を剥がすので、この意味でも味がすっきりしている。世界でも珍しく、手間のかかる樹上で完熟してから収穫する農法を採用している農家が多く、独特の甘さがあるため私はこの農法の農園のものだけを扱うようにしている。

中南米はアメリカという大市場に製品を供給しやすい地勢上の利点を生かした大産地が多くあるが、ブラジルについで有名なのが、「コロンビア」だ。かつて高品質といえばコロンビアという時代があった。現在は不安定な政情の影響もあり、よいコーヒーを作る農家が減ったように思うが、あの腰の座った深みのある苦いコーヒーはやはりコロンビアの豆でしか作り出せない。
少し特殊な味わいを持つのが「グァテマラ」。火山灰性の強い土壌で中南部らしい苦味の後に仄かな酸味を感じさせる。味わいが濃く、家庭でも簡単に十分強い味が引き出せるのでストレートコーヒーの中では人気のある豆だ。

他にもキューバやコスタリカなどご紹介したい豆がたくさんあるのだが、おいおいご説明していきたい。

最後にアジアのコーヒーについて書いて豆編を終わりにしようと思う。
アジアのコーヒーの代表格は何と言っても「マンデリン」だろう。インドネシアのスマトラ島で産出するコーヒーを一般にこう呼んでいる。大英帝国と東インド会社をめぐる欧州列強の思惑が入り乱れて、植民地政策を大きく左右したマンデリン誕生物語もすっごく面白いのだが、これも書いている場合ではない。残念だ。ともあれ彼らのゴタゴタのお陰で世界を代表する高品質コーヒーがアジアから生まれたわけだが、秘密主義が貫かれていて生産の実態は実はあまり詳らかになっていない。輸入元にも農園の場所さえも明らかにされていないものがあると聞いた。近年インドネシアは新興の経済大国となり産業構造もずいぶん、変わってきたのではないだろうか。年々値段は上がっているが品質は落ちてきているように感じる。水洗式と天日式のハイブリッド方式で独特の発酵臭を纏ったマンデリンの伝統を絶やしてほしくないと願っている。
スマトラ島に隣接するスラウェシ島のコーヒーが「ママサ・カロシ」だ。日本ではトアルコ・トラジャとして知られている。今やこちらの方が本家よりもマンデリンらしい味を残している。生産量が極少なので高値だが納得できる風格ある味だ。
これらインドネシアに連なる小さい島々には、良質なコーヒーを算出する国がたくさんある。特に「東ティモール」と「バリ」、そして「パプア・ニューギニア」のコーヒーはどれもバランスの良い上品なコーヒーで、アフリカの高品質コーヒーから激しさを取り去ったような優しい味がする。ジャマイカのブルーマウンテンやハワイ・コナのような手触りといえばイメージできるだろうか。
そのジャマイカのブルーマウンテンだが、まあこれは文句なく旨いコーヒーではあるが、あの値段だからそりゃそうだろうとしか言えない。コーヒーを日常の楽しみにして欲しい当店としてはちょっと扱いにくいシロモノだ。ちなみに品種はエチオピアの在来種と同じもので外見も焙煎時の振る舞いもよく似ている。
ハワイコナは、そういう意味ではコロンビアのコーヒーにそっくりな外見と振る舞いで、それよりもずっと洗練された味がするコーヒーだ。だがまあやはりこれも、そういう値段だよね、としか言えないものではある。
手頃な価格で、うまく焼けばそれ以上の味わいを引き出せる可能性が、これらのアジア小国のコーヒーたちは持っているような気がする。心して焼いてあげたい。

さて、多少(本当はかなり)心残りはあるが、駆け足で世界のコーヒーについて大きく3つのグループに分けてお話してきた。このだいたいの分類を念頭においてコーヒーの飲み比べを試してみて欲しい。自分好みの味がきっと見つけられると思う。

さて次回以降、実際のコーヒーの抽出技術について、すぐに役に立つ「コツ」を中心に書き進めていきたいと思っている。引き続きよろしくお付き合いください。

おいしいコーヒーのいれ方 part-3 コーヒーの名前

さて前回は、どんなお店で珈琲豆を調達すべきかについて書いた。

で、さっそく自家焙煎のお店に行ってみると「キリマンジャロ」とか「ブラジル」とか「ブルーマウンテン」とか「ハワイコナ」とか・・いろんな「名前」の珈琲豆が並んでいる。

味はどんなかいなと説明を読むと、ふむ「爽やかな酸味」か・・酸っぱいのは嫌だな。
どれ「コクのある苦味」か・・何かいろいろ書いてあるようだが、よくわからない。

仕方がないのでFacebookでトモダチがオススメしていた豆を買ってみるか、てな感じになってしまいがちではないだろうか。
今回は、珈琲豆の名前を見てコーヒーの味を判断するヒントについて書いてみたい。


さて皆さんは「コーヒーノキ」にどのくらいの品種があるかご存知だろうか。お店で売っている豆があれだけの種類あるのだから、相当あるだろうと思われるだろうか。
実は三種類しかない。

アラビカ種、カネフォーラ種、リベリカ種の三種類だ。

しかもこのうち飲用に供されているのはほぼアラビカ種しかない。
一部、カネフォーラ種の亜種「ロブスタ種」がエスプレッソ用や工業コーヒー(インスタントなど)に使用されている。

このアラビカ種はエチオピアのアビシニア高原にしか自生していなかったもので、古くから現地人によって様々な用途に使われていた。
イスラム教で霊力のある(眠くならないから徹夜でお祈りできる)飲料として使われるようになって秘薬とされたが、あまりにも美味いので自然と広まっていった。

キリスト教ではもちろん敵性の飲料ということで禁止されていたが、ローマ教皇クレメンス8世が、これまたあまりにも美味いのでコーヒーに「洗礼」を与え、教徒の飲用を許したことで世界中に広まって現在に至る。

この広まり方に面白すぎるドラマが沢山あるのだが、「おいしいコーヒーのいれ方」とは直接の関係がないので今回は(とても)残念だが割愛させていただく。


こうして広がったアラビカ種だが栽培は難しく、北緯25度から南緯25度までの標高1500m以上の高地でなければうまく栽培できない。
逆にいえばこの条件を満たすほとんどの国で現在は栽培されている。

そして世界各地に産地を広げたコーヒーは、その土地の「土」と近接する他の植物の植生に影響を受けて、各地でその形質を変化させていった。
現在確認されているだけで20種類以上の亜種があるし、耐病性や収穫性の高い人工的に作られた亜種もある。

事実上品種はアラビカ一種しかなので、この亜種のことを便宜上コーヒーの世界では「品種」と呼んでいるわけだが、通常品種の違いで味に大きな違いは生まれない。エチオピアのティピカ種を東ティモールで育てても同じ味にはならないのだ。むしろ育った土で味は決まる。エチオピアのコーヒーとブラジルのコーヒーは明らかに味が違う。土で決まるのだから重要なのは「国境」ではない。大まかにコーヒーの味を決める「エリア」を解説していこう。

まずはコーヒーの故郷「アフリカ」について。
原産国エチオピアのコーヒーは、大英帝国がアラブを支配していた頃、東インド会社の主要商材であったが、その際出荷に使われたイエメンの「モカ港」の名をとって長らく「モカ」と呼ばれてきた。当然、イエメン産のコーヒーも同様にモカと呼ばれる。現在は、各地で品質の高いコーヒーを作る努力が実り、「村」単位まで特定して豆を買えるようになったので大くくりな「モカ」という言い方は廃れて、エチオピア・イルガチェフェというような名前で売られている。逆にこういう名前でコーヒーを売っている店は高品質なコーヒーを扱っているという証左になる。
最近ニュースでコーヒーの価格が高騰している、という話をよく聞かれたと思うが、これはニューヨーク相場市場で先物として取引されているコーヒー豆の話で、行き先を失った投機マネーが安定しているコーヒー市場に流れ込んできたというだけの話である。産地の豆をオークションで落札しながら流通している高品質コーヒーには関係ない話なのだ。お店で「国の名前」だけで売られているコーヒーは単体では高値の付かない豆を市場に持ち込んで流通している商材である可能性が高い。名前付きの豆と国名の豆では我々のようなロースターに入ってくる生豆(はい、なままめですね)の価格で2倍近い開きがあり、欠点豆も多く含まれている。地域名がついていればそれでいいというわけではないだろうが、高品質コーヒーを探すひとつの道標にはなると思う。
エチオピアの「モカ」に並んでOldファンに馴染み深いタンザニアの「キリマンジャロ」だが、この国はシッパーと呼ばれる輸出業者が力を持っていて、地域名で豆を出荷しがちな農協依存の多くの国とは違い、しゃれたブランド名を付けて出荷しているケースが多い。「アデラ」「リヴィングストン」「KIBO」「エーデルワイス」などが有名どころか。
「モカ」も「キリマン」も昔からコーヒーを愛飲された方には「酸っぱいコーヒー」のイメージが強いのではないだろうか。しかしコーヒーが酸っぱいのは焙煎が浅いからなのであって、豆が固有に持っている味ではない。ヨーロッパではこれらのコーヒーを他の産地のものよりも深く焙煎するのが通常の流儀で、原産地ならではの複雑な味わいを堪能させている。日本でこれらのコーヒーを酸っぱくしていたのは、アメリカでこれをお茶代わりに浅く焙煎して飲んでいた習慣が戦後広まった影響による。アメリカンコーヒーなるものの由来である。この話、はじめると長くなるので関心のある方は過去記事をご参照いただきたい。
深く焙煎されたエチオピア・コーヒーは「花束を抱きしめたような」香りと現地で言われる馥郁とした香りが特徴で、タンザニア・コーヒーは「フルーティな」と一般に形容される柑橘のような少し強めの後味が特徴だ。このように深く焼いても潰れてしまわない複雑な味わいのことを、潰れた香味が「苦味」であることから対置して「酸味」と呼んでいる。このネーミングがコーヒーの味を一般の人に説明しにくくしている元凶なのだ。酸っぱくないのに「酸味」という言葉を使わざるを得ないほど、コーヒーの味に対するボキャブラリーは進化していない、ということだ。だからご期待いただいてこの記事を読まれている方には大変申し訳無いのだが、当欄でこれ以上の味についての解説はできない。皆さんが自分好みのコーヒーを発見するために各国、各店のコーヒーの味を確かめていく「海図」の役割を当記事は指向している。だから特定のコーヒーをオススメしたりもしない。ぜひ皆さんの感性で各国のコーヒーを味わってみて欲しい。
さて、「アフリカ」のコーヒーを駆け足でご紹介していこう。
赤道直下のケニアのコーヒーもタンザニアと同系統の味だが、はっきりとした味で香りも豊か。わかりやすいコーヒーの代表格と言えるだろう。
そして最近注目を集めているのが、タンザニアの小さな隣国「マラウイ」にしか産出しない「ゲイシャ」という亜種。エチオピアのような花束フレーバーがとても上品で、バランスの良い品種。産出量が少なく今まで注目されなかったが、キューバや、かつて「コロンビア・マイルド」と称され高品質コーヒーの代名詞とも言われながら不安定な政治に翻弄されて苦戦しているコロンビアコーヒーの救世主として期待されて移植され、近年販売量も増えて、かつ結構な高値で取引されている。

今日は、アフリカだけで終えてしまったが、基本的な豆を見分ける構図については盛り込んだつもりなので、次回はその他の地域について解説を試みたい。
しかし、この記事、回を追うごとに長くなっていくが読んでいただけているのだろうか。ちょっと心配だが、せっかくなので必要なことは端折らずに書いていきたい。お付き合いいただければ嬉しいです。


おいしいコーヒーのいれ方 part-2 珈琲豆を調達する

 連載企画「おいしいコーヒーのいれ方」2回目です。前回は珈琲を抽出するための器具として「コーノ式ペーパードリップ」と「コーヒーポット」をオススメした。
では、さっそく珈琲を入れてみたいが、肝心の珈琲豆はどうするのか。
それが今回のテーマ。

当たり前の話だが、美味しい珈琲は美味しい珈琲豆からしかできない。
では、「美味しい」とはどういう味のことを言うのか。

特に珈琲は人によって好みの差が激しい嗜好品であるとよく言われる。
言わんとしていることはとてもよくわかる。

私も自分でタバコを吸っていた頃、タバコを切らして喫煙室で隣にいた同僚にキャビン・マイルドをもらって吸った時、どうしてこんな味のタバコがあんなに売れているのか、どうしても理解できなかったものだ。

珈琲の勉強を始めて三人目のお師匠さんについた時、とにかくたくさんの国の珈琲を10種類、1Kgづつ、というから計800杯くらいの珈琲を一ヶ月で飲まされた。
それが弟子入りの条件だったからだ。

師匠の焼いた豆はどの珈琲もそれぞれにとても美味しいと感じたが、マンデリンというインドネシアの珈琲だけがどうしても口に合わなくて往生した。

しかし、マンデリンを愛する珈琲好きはとても多い。
自分が「美味しい」と感じなくても誰かにとって「美味しい」マンデリンは存在するということだ。じゃ、いったいどうすればいいんだ?

この解は、珈琲が出来上がる工程の中に潜んでいる。したがって今日のお話もややこしく長い話になりそうだが、ご辛抱いただきたい。



珈琲はアカネ科に属する学名「コーヒーノキ」(そのまんまですね)という樹木の種子を煎って湯に(または水に)抽出して飲用するものだ。
この種子自体は非水溶性で、生のまま水に漬けておいても成分は出てこない。

それに硬くて食用もできないが擦り潰して舐めると、とても酸っぱい。
青臭くて嫌な匂いもする。

この珈琲の生豆(なままめ、この場合は絶対に「きまめ」と読んではいけません。生という字は「なま」と読んだ時は「火を通していない」の意味で、「き」と読んだときは「純粋な」という意味になるのです。それぞれ酒や蕎麦の例に当てはめて吟味してみてください)を「焙煎」すると、豆はその内部に平均7μともいわれる微細な孔がたくさん空いて(その分豆が膨らむ)、その孔の中に約800種類にもおよぶ化学物質が生成される。その孔の中に湯を(または水を)通し、珈琲という飲料を抽出するのだ。


この多孔質化は、珈琲豆の中心部に顕著なので、豆全体をむらなく加熱したい。
こういう時人は昔から「温めた空気を使ってゆっくり加熱する」方法を選んできた。

で、これに特化した機構を持つ珈琲焙煎機を使って焙煎するわけだが、近年よく見かける「その場で生豆を焙煎」して販売するタイプのお店には注意が必要だと思う。

多くの場合このタイプのお店は700度近い高熱で90秒で豆を焼き上げる「ジェット・ロースター」という機械を使っているが、調理を経験した人はわかるだろうが急速に加熱すると外周部と中心部の焼け具合には大きな差が出る。

これを積極的に使う中華料理が大火力のバーナーを使う所以である。

実際に今まで飲んでみたジェット・ロースター製の豆はどれも芯残りで軽い酸味が残っていた。
したがってこのビジネスモデルは、味の部分は少々犠牲にしても「鮮度」の方を重視するというもの、ということになる。そしてこのロジックには一理、しかも重大な理があるのだ。

珈琲豆は焙煎してから一ヶ月や二ヶ月で飲めなくなってしまうものではないが、焙煎によって作り出される800種類の化学物質は、一週間で約60%も失われてしまうのだ。

スーパーに並んでいる「自家焙煎店の豆」は流通の仕組みの関係で一ヶ月ほどたったものがほとんどだと聞いている。
またはお歳暮でもらった豆を半年ほど冷凍庫で保管して飲み続ける家庭もまったく珍しいものではない。
家庭で飲まれるレギュラーコーヒーの多くがそういった味の中核を失ったコーヒーであることを考えると、鮮度の高いコーヒーはそれだけで貴重であるとも言える。


それでもやはり最も重要なのは「味」だと思う。
だから中心まできちんと焼けて、しかも焼きすぎていない(焼き過ぎると、化学成分が焼き切れて「苦いだけ」になってしまう)豆を、鮮度が高いまま提供する「誠意ある」お店を見つけることが、美味しい珈琲を入手する最良の手段だ。

逆に言うとジェット・ロースターの普及を許しているのは、古い豆を平気で販売する自家焙煎店が招いた自業自得の事態とも言える。


全国のロースターの80%ほどが採用している「フジ・ローヤル」という大阪の焙煎機は、豆を中心まで熱するのに絶対に欠かせない、釜内の空気量を調整するダンパーを備えた世界でも珍しい機械で、世界のスタンダードであるドイツ、プロバット社のものよりも焙煎という工程の特性をよく捉えていて優れていると思う。
その分、使いこなしが難しいが。


とりあえず、この機械を目印にして、なるべく焙煎の新しい豆を入手する、という基本方針で近所の焙煎店を当たってみて欲しい。
日本の小売の流通を複雑を極めている。珈琲豆は生鮮食料品なのに、スーパーなどでは、そのように取り扱われてはいないという事情を鑑みると、今のところ自家焙煎店で豆を焼いた人から買うというのが最良の手段であると思う。


さて、また今日もお喋りが過ぎたようだ。でも豆選びもまだ端緒である、お店選びが大事だ、という考えてみれば当たり前のようなスタート地点にたどり着いたばかりだ。
次回は、では自家焙煎店に並ぶたくさんの豆ってどこが違うのよ、といったあたりに斬りこんでみたい。

おいしいコーヒーのいれ方 part-1 抽出の道具

おいしいコーヒーの入れ方、と言えば今や直木賞作家になってしまった村山由佳さんの人気ノベルシリーズだが、今日は本当にコーヒーを入れる方法のお話。

お家でコーヒーを入れようと思ったら、まず道具が要る。
何がいいですか、とよく聞かれる。

で、ここは迷わず円錐形のペーパードリップを強くオススメしておきたい。


コーヒーを美味しく入れる方法のポイントは、「灰汁を入れない」というところにある。
コーヒー豆は油脂で出来ている。
これを高い温度のお湯で抽出するので「乳化現象」が起き、味が活性化して美味しいコーヒーになる(故に冷水で抽出する水出しコーヒーの類は不十分な抽出方法と言える)のだが、コーヒーを抽出しているうちに油が灰汁になってしまう。この灰汁がコーヒーを不味くしている一人目の犯人なのだ。

コーヒーを入れる方法にも様々あるように思えるが、基本的には漬け込んで味を出す「浸漬法」(フレンチプレスとサイフォン)とお湯を重力の力でコーヒー豆に空いた7μの孔に通し抽出する「透過法」(ペーパードリップとネルドリップ、そしてコーヒーメーカー)しかないのだ。
そして、時間につれて発生する灰汁をカップに入れないようにできるのは「透過法」だけだ。透過法ならば、必要な量の抽出をしたらフィルタを外してしまえばいい。

コーヒーのことを教わる前は、フィルタに注いだお湯が全部落ち切るまで待っていたものだが、あれは一番やってはいけないことなのだ。


で「コーヒーメーカー」も透過法を使っているのだが、これはいけない。途中で抽出をやめることができないからだ。よってコーヒーメーカーは透過法だが、除外する。


ネルドリップは趣味性が高くてかっこいい。
だが、ネルの手入れが大変だ。
洗った後冷水につけて(決して乾かしてはいけない)冷蔵庫に保管しておかなくてはならない。
そのように気をつかって保管しても30回くらい使うと落ち切らない油で目が詰まってきてしまう。
そうしたら交換だ。
結構大変なのである。

乾かしてはいけないというネルの性質上、毎日使う方しか向かないし、これを毎日やるのは本当に大変だ。

と、いうわけでぜひともペーパードリップをオススメしたいのである。


ペーパードリップにも大きく分けて三種類ある。
カリタ・メリタ・円錐形(コーノ式、ハリオ)である。

元祖はメリタで1908年発表。
舟形の底ではなく途中に一穴が空いている。
メリタシステムを手本に日本で1958年に発売されたのがカリタでこれは底に三穴が空いている。

どちらも舟形で底部に長い浸漬用スペースがある。
浸漬法の欠点である手入れの煩雑さを改善するのが目的の改良で、どちらも完全な透過法にはなっていないわけだ。

普通に考えて、重力の力で湯を下に引っ張ってもらい、その力でコーヒーから味を引き出そうと思ったら自然、フィルタは円錐の形になるのではないか、と素人の私でも思うが円錐形フィルタをサイフォンの開発メーカーであった珈琲サイフォン株式会社が考案し製品化するのが1973年のこと。
これがコーノ式である。

もともとプロのカウンターマン用に作ったものなので一般の販売チャネルに載せることには熱心でないようで若干入手しにくいが、東急ハンズなどでなら必ず売っている。

よく似た形の「ハリオ」もV60という製品を2005年に発売したが、もともとコーノ式の製造をハリオを請け負っていたのが、2004年にコーノ式の特許が切れたのを待って自社で発売したというもので、さすがにデザインなどを変えているのだが、肝心の灰汁を排除するためにわざと短く設けられた「リブ」という機構を完全に全面に展開してしまっている。
このせいで、抽出のスピードも上がってしまい十分な味を出すのが難しくなっている。長年作っていても精神までは伝わらないということなのか。

と、いうわけで抽出器具は一択で「コーノ式円錐フィルター:ドリップ名人」という製品をオススメする。


さらにせっかくここまできちんとフィルターを選択したのなら、お湯を沸かしたケトルからそのままお湯をドバッというのはぜひやめて、コーヒーポットを揃えたいものだ。

カリタで比較的安価なものを出しているので最初はそれでいいと思う。
しかし、こんなものは絶対壊れない一生モノなので、せっかくならいいものを、とお思いの貴方には、「ユキワ」という新潟のメーカーの、二人用のフィルターを使っているならM-5。四人用のフィルターを使っているならM-7というポットを強く強くオススメしておく。

細部まで気を使った逸品でこれを使っていると他のポットでは珈琲を入れたくなくなる。ちょっとお値段は張るのだが、まあ一生使うと思えば気にならない程度の金額だし、実に多くのプロ・カウンターマンが愛用しているものでもある。上達も早くなるというものだ。


もう結構な紙幅を費やしている。しかも文章がややこしい。しかし物事の道理は複合的だ。どうかご容赦いただきたい。せっかく書き始めたのでおいしいコーヒーを入れるところまでは書き進めていきたいと思っている。お付き合いいただければうれしい。
ではまた明日。


  

2012年9月19日水曜日

ソウルフード

専門学校の広告を仕事にしていた頃、感心した企画のひとつに某有名調理系専門学校が実施した、「あなたの最後の晩餐を教えて下さい」という巻き込み型広告があった。

「もし地球最後の日が来たとしたら、最後の晩餐に何を食べますか?」
そう問いかけるアンケートの回答を編集して、広告紙面を作るという企画。

高校生から帰ってきた返答のほとんどが、家族との想い出にまつわる食べ物だった。
そこを狙って作った企画なのに、その心の準備を上回る感動的な回答の数々に「食」というものが、いかに人間の深いところと結びついているかを改めて痛感させられたものだ。


僕は3歳から18歳までを釧路で過ごしたが、家族でたまに外食をするとなると「泉屋」という洋食店で、よく熱した鉄板に盛りつけられたスパゲティーミートソースの上にカツが載った、通称「スパカツ」を食べるのが定番だった。

釧路の人でこれを知らない人にはいまのところ会ったことがないし、友人たちもたまに帰省すると立ち寄って懐かしい味に思いを馳せると聞く。

太くて芯のない、アルデンテとは対極にある麺。
鉄板の上で盛大に跳ねまくるミートソース。
普通盛りでもちょっと完食に苦労するボリューム。
肉厚なカツ。
だけど(だから?)ウマい。

さらに今はもう無くなってしまった丸三鶴屋というデパートで買いものをした後に、隣のいなり小路という商店街にあったまんじゅう屋で大きな肉まんを買って家で食べるのが何よりの楽しみだった。
このまんじゅう屋も今はもう無く、閉店したと聞いたときは本当に悲しかった。

同じように帯広の人は「インデアン・カレー」という店のカレーに特別な感情を持っているようだし、室蘭のカレーラーメンというのもきっとその類いのソウル・フードなのだろう。


その釧路を離れて大学進学のため札幌に出てきた僕は、外で食事をするたびに泉屋のスパカツに似た店を探したが、そんなものはなかった。
最初に借りた部屋は北32条西6丁目の第二高森ハイツという小さなアパートで、北31条西4丁目あたりにあった、満龍という中華料理のジャンボあんかけ焼きそばというのが気に入ってよく食べていた。

ずいぶん後になって結婚して住んだ川崎で、溝の口という駅の隣に「満龍」というお店を見つけて、入ってみたらジャンボあんかけ焼きそばというメニューがあって、食べてみたらまったく同じ味でびっくりした。チェーン店だったんだろうか。

大学の近くにあった時館(じかん)という軽食喫茶の「アトム丼」というオリジナルメニューも大好きで授業の後、サークルの仲間とよく食べにいった。
北24条の宝来という中華料理屋のC定食(回鍋肉)も定番だったな。


大学を卒業して就職のため東京に出た。
最初のオフィスは新宿にあり、初めて目にした大都会は目眩がしそうなほど人がたくさんいて、そこら中に美味しそうなお店があり、どこにだって行列ができていた。

釧路も札幌も田舎というわけではないと思うが、僕には並んで食事をする習慣はなかった。
埼玉県が僕の担当エリアだったので時々西武新宿線に乗るのだが、雨の日はサブナードという地下商店街を通っていくと濡れずにすんだ。
サブナードにはいくつも飲食店が入っていたので、そのどこかで昼を食べてから午後のアポイントに向かおうと物色していて目についたのが「ロビン」というカウンターで8席ほどしかない小さなスパゲティー専門店だった。
店に入って明太子スパというのを注文した。

僕の知っている明太子スパってのは茹で上げたパスタにバターと明太子を合わせて海苔をパラパラって感じのやつだが、何故だかいきなりおっきい中華鍋にすでに茹でてあったらしき麺と明太子とたっぷりの野菜を入れて激しく炒め始めた!明太子が調理場内でバチバチ跳ねている。
それをものともせず、中華鍋を振り続ける。それをジャっと皿にあけて「お待ち」と言いながら僕の目の前に置いた。まだ明太子がバチバチいっている。
全体によく明太子が絡んだ太い麺をフォークに巻き付けて口に入れたその瞬間、僕はあの泉屋のスパゲティーを思い出していた。
全然違う味なのに、その飾らないスパゲティーからは泉屋のあの懐かしい感じが立ち上ってくるのだ。

その日から週に一度はその店に通った。
他にもたくさんのメニューはあったが、明太子が最高だった。
そのうち自分のオフィスが銀座に移ってしまったが、新宿に用事があればサブナードまで足をのばしてロビンに行った。

しかしいつの間にか、サブナードからロビンも消えてしまった。

有楽町に「ジャポネ」という店があり、似た風味が味わえるのだが、あの反則的な明太子スパの豪快さだけは、あそこでしか味わえない。
今は小田急永山のあたりで中華料理屋として営業していてスパゲティーも出しているそうだ。ぜひとももう一度食べたい。


自分が「地球最後の日の晩餐」に選ぶのは、きっとこうした通い詰めた店の、飽きもせず食べ続けたメニューのどれかだろう。いやできれば全部食べたい。ぜひとも全部を。

しかし、こうして振り返ってみると自分のソウル・フードと呼べる食べ物はガイドブックなんかで探した店はひとつもなくて、通ってた学校の近くや職場、住んでいた場所の近くのお店が多い。生活導線の途中に無ければ通い詰めることは難しいので当たり前なのだが、だからこそ我々も近隣の皆さんのソウルフードになりたい、と思う。

ずっと前に、初めていらしたお客様が「ああ、これ子供の頃よく食べたショートケーキの味です。懐かしいなあ。」と言って下さったことが、なんだかすごく嬉しくて思わず涙ぐんでしまったのだが、今でもこれ以上の褒め言葉はないなあと思う。
そして、そんなふうに言っていただける方を少しでも増やす努力を続けることが、生活の場に密着した飲食店のたったひとつのミッションだと、今は確信しているのだ。

(旧Cafe GIGLIO Blogから再掲)