2014年11月15日土曜日

僕らは「地上の星」である

北海道新聞朝刊の「卓上四季」というコラム。
朝日新聞でいう「天声人語」にあたるものだが、教養ある人生の先輩からの箴言としていつも読んでいる。
最近筆者が変わったと聞いた。

今朝は、彗星への着陸成功にかけて、中島みゆきさんの「地上の星」を話題にしていた。
しかしあろうことか、この歌を平凡な我々も努力すれば「星」になれるという趣旨にとらえて論旨を展開していた。

筆者はプロジェクトXを観て、主題歌としての地上の星を<歌>として聴いただけだけなのだろう。
先入観を捨て、中島みゆきさんの書いた言葉に心を落ち着かせて耳を傾ければ、まちがってもそのような解釈にはならないはずだ。

手の届かない場所にある星のような華々しい活躍をする人だけが、世界を動かしているのではない。
地上にいるわれわれ一人ひとりこそが世界なのだから、空ばかり見るのはやめよう、先人が何処に消え、われわれが何処に向かって歩いているのかに目をこらせ、と中島みゆきさんは歌っているのである。


前職で、ある音楽系専門学校の入学式に招かれた。
その学校の名誉校長をつとめる湯川れい子さんが登壇し、こう言った。
「この学校を卒業して、デビューしてスターになる人もいる。しかしそのスターも支えてくれるたくさんの人がいなければ輝けない。そんな業界の一人ひとりがみんな「星」なんだと思います。どの「星」もみんな等しく大切だと我々は考えています」と。
そして教員たち(みんな有名なミュージシャンです)のバンドと在校生の歌で「地上の星」が歌われた。

湯川先生のメッセージを抱いてその歌を聴いていると、会社の中で、業績が思わしくない時、売れてる営業パーソンを妬ましく思ったり、自分の努力は誰かに理 解されているだろうかと疑わしく思ったりしたことなんかが心をぐるぐる回って、苦しくなって、来賓席で恥ずかしいくらい泣いた。
そしてこの専門学校に入学する学生たちの未来と、自分自身のこれからに思いを馳せて、なんとなくだけど大丈夫だな、と思えた。

今でも地上の星を聴くとその時のことを思い出す。