2017年5月16日火曜日

時間旅行なんて簡単なのさ

センパイにお借りしている『植草甚一コラージュ日記』を読んでいたら、
「ヒサモトでコーヒーとケーキ」
という記述を見つけた。


ヒサモトというのは、家内が東京で修行した三軒茶屋のお店だが、70年代後半にはまだ田園都市線沿線にたくさんの支店を持っていた時代。

レシピは変わってないから、いまウチで作っているショートケーキを植草甚一さんも召し上がられたのかなあ、などと想像したら、見慣れた店内ごと70年代に運ばれたような気がした。

一瞬でいいなら時間旅行なんてわりと簡単なもんだ。

そういえば、東京でヒサモトのショートケーキのファンだったという人が、わざわざ北海道旅行の旅程にウチの店を組み込んで来てくれたりしてたなあ。
あの人も、もう今はないヒサモトのショートケーキを食べて、時空を超えるオプショナルツアーを体験したってことなんだな、きっと。

植草甚一コラージュ日記〈1〉東京1976
植草 甚一
平凡社
売り上げランキング: 731,172

2017年5月1日月曜日

ドリップバッグという方式について少し補足

ドリップバッグを商品化してから、自分でも何度か使ってみて、さらに勉強のため他店、他社のドリップバッグも淹れてみて、すこし説明を補足しておきたくなったので、書きます。


以前の記事で、ドリップバッグは実はドリップではなく「浸漬法」なのではないか、と指摘したんです。
浸漬にかかる時間は約4分、抽出自体には2分かかるかかからないか、というところだろうから2分ほどの蒸らし時間を追加したほうがいいだろう、というのがその時提示した実際の手順でした。

しかし、ことはそう単純ではない、とわかってきたんですね。
同じ淹れ方でやってみても、家人と私では出来上がったコーヒーの味が違う。
私が淹れると、ドリップで淹れた時とさほど変わらない味がでるんですが、家人のほうは味が出てないんですね。
で、そういえば家人はドリップで淹れてもこういう味なんです。
味の輪郭はきちんと出るんだけど、中身が薄い。

漬け込んでいるだけなら味に違いは出ないはずで、やはりポットからの注湯の分量や勢い、間隔などの要素が味に大きく影響するのだろうなあ、と。

ドリップコーヒーでこういう差がでることはよく知られているんですが、通常の半分以下の量で入れるドリップバッグでは、ほとんど無視できるものと思い込んでました。
とんでもない。

で、そういう目で(舌で?)他社のドリップバッグを試してみると、量が少ないから、という以前に味が劣化していると感じられるんです。
それも当然で、ドリップバッグは商品特性上、挽いてから時間が経っているものが多いですから。

美味しい豆で作ってあって、鮮度が高ければドリップバッグでも、ハンドドリップ並みとはいかなくても、そのお手並みなりの同じ手触りのコーヒーが淹れられるんです。
ということで、本質的にやはりドリップバッグはやはり、どうしようもなく「透過法」だった、ということで訂正しておこうと思います。