2017年8月25日金曜日

オリジンとオリジナリティ

19世紀中頃のフランスで生まれたシブースト・クリームは、カスタードクリームとゼラチンとイタリアン・メレンゲを合わせ、ふんわりした食感をケーキの世界にもたらした画期的なクリームです。
現代でケーキによく使われるようになったムース・ババロア系の原型ともいえるものです。

代表的なケーキが、その名も「シブースト」
うちでは「りんごのシブスト」の名前で、秋から冬にかけてお作りしています。

りんごのシブスト
 そして今日は同時に、その直系の発展形「ババロア」もお出ししています。
「マスカルポーネチーズとレモンのババロア」です。
マスカルポーネチーズとレモンのババロア
ケーキにも歴史があります。
個人の才能によって表出されると思われがちなオリジナリティも、実際には長い時間をかけて積み上げられた先人の業績の上に築かれているんだなあ、と感じます。

2017年8月24日木曜日

すべては鮮度のために

今日は不安定な天気の札幌です。
雨の日はすこし仕上がりがスモーキーになるような気がして、焙煎は避けるのですが、さすがに看板ブレンドが品切れでは営業できません。

ジリオブレンドを構成する「エチオピア」「タンザニア」「パプアニューギニア」を焙煎しました。

エチオピア イルガチェフェ WASH

タンザニア アデラAA

パプアニューギニア シグリAA
豆の選択は、いろいろ試行錯誤をして、結局三種とも、最後の焙煎の師匠中野弘志さんの教えてくださった豆になりました。
他の焙煎所で教えていただいた豆は、いいものもあったのですが一般に供給の安定度が低く、代わりの豆を選んではその都度焙煎度の調整をしなくてはなりませんし、思った味にならないものもありました。
その点、この三ブランドは、この10年概ね安定した供給を受けられています。

鮮度のことを考えると、少しずつブレンドして、ストレート用の豆がなくなった時にブレンドの中に混ぜ込んだ古い豆が残らないようにしています。
ゆえに、ご注文いただいてから、やおらブレンドをはじめたりして少し時間がかかることがありますが、すべては鮮度のためにやっていることですのでご容赦ください。

2017年8月23日水曜日

面陳と背刺し

昨日の肌寒い雨で夏も終わったか、と思ったらさっそく厳しい残暑の札幌です。

今朝は「マラウイ」と「エルサルバドル」の焙煎をしておりました。

マラウイ・ミスク・チノンゴAA

エルサルバドル・サンタ・リタ農園
マラウイはアフリカはタンザニアの東隣に位置する小国です。
パナマのエスメラルダ農園で、耳慣れない「ゲイシャ」という品種の豆がカップ・オブ・エクセレンスを受賞して話題になりましたが、そのずっと前からゲイシャ種を栽培していた国です。
もとは、エチオピアのゲシャ村で発見された変異種ですね。
古い品種ならではのパンチの効いた味が魅力です。

グァテマラの隣国エルサルバドルのサンタ・リタ農園は、中米ではもう作っているところの少なくなったブルボン種を丁寧に作り続けている数少ない農園のひとつ。最近ハイブリッドの栽培品種が増え、味の濁りが感じられるようになったグァテマラのセカンド・チョイスとしてお勧めできます。

この二種のコーヒーは今年のカフェジリオ開店10周年記念リニューアルで、新たにレギュラー入りした豆なのですが、それまでも月替りで特設コーナーに置いて販売していました。
不思議なことに、出せば必ず買っていかれたお客さまも、なぜかレギュラー商品になると、ご案内してもお買いにならなくなります。
 書店ではよく知られる「面陳」効果です。
棚に陳列するさい、表紙が見えるように並べるのを「面陳」、背表紙が見えるように並べるのを「背刺し」といいますが、こんなことで驚くほど売れ行きが違うそうです。

先日もレンタルDVD店で、中井貴一さんの「グッドモーニング・ショー」という映画が新作コーナーに面陳されていて、それがいつ行っても全巻レンタル中でした。
こんなに人気があるならもっと入荷すればいいのに、と思っていたのですが、二週間後背刺しに移行した瞬間から一巻も借りられていない、という気の毒にもわかり易すぎる結果になっていました。

純粋に味だけでコーヒーを選んで欲しい、という想いから原価にかかわらず価格だって500円に統一しているのです。面陳だから売れる、というのでは悲しい。
きっとその肝心の味がうまく伝えられていないのでしょう。

しかし、これが難しい。
コーヒーの神様、と呼ばれた襟立氏(伝説の名店「もか」の標さんのお師匠さん)のご長男がやっておられた宮の森の「リヒト」(現在は閉店)では、すべてのコーヒー豆の説明書きに、「苦くも酸っぱくもありません」とだけ書かれていました。
知れば知る程、言葉にできなくなるのが珈琲の味なんです。
ましてや酸っぱいとか苦いとかは、焙煎度の差に過ぎず、本来のコーヒーの属性ではない。

今は、「ローストナッツ」や「チョコレート」「花」「柑橘」といったアロマの傾向で表現するのが主流ですが、これも飲み慣れない人には伝わりにくいですし、少なくない人がそういうフレーバーを付けたコーヒーと勘違いされたりします。なにかうまい方法はないものか、もう少し考えてみたいと思います。

2017年8月22日火曜日

夏の終わり

今日は札幌は雨。

また蒸し暑さが戻ってきましたが、もうすぐ夏も終わりですね。
お客さまが、わたくしどもの店名にちなんで、ユリの花(イタリア語でGiglio)を持ってきてくださいました。


例年夏には「いちじくのタルト」をお待ちいただいておりましたが、今年いちじくの不作で、短期間しかお出しすることができませんでした。
替わりにお出ししました「桃のショートケーキ」は大変ご好評いただき、見事リリーフエースをつとめてくれました。
その桃もそろそろ終わりです。


 この夏もうひとつの主役がこのムースでした。

入荷するフルーツの出来に合わせて、こまかく中身の変わるムースです。
酸味のある赤い果実と黄色い果実を組み合わせて、たっぷりの果物と一緒にムースに仕立てています。


まもなく、「スイートポテト」や「りんごのシブースト」といった秋のケーキへの切り替えがはじまります。