市民講座やカルチャースクール、雑誌社主催のセミナーなどからはじめて、三つほど本格的な珈琲塾にも入塾して学んだ。
いろいろ学んだが、真理だなと思ったのは「そこに10人コーヒー屋がいれば、10通りのことを言う」という一言だ。
器具の優劣、湯の温度、焙煎機の方式やバルブの使い方など、多岐にわたって、本当にいろいろな意見と理由があるものだなと思った。
しかし、不思議と挽き目の細かさに関してだけは、どの先生も一貫して「中細挽き」を採用して、器具を変えても特に挽き目を変えることはなかった。
中細挽きとは、カリタの電動ミルでも、FUJIローヤルみるっこでもメモリを3.5にセットすればいい。
これを手動のミルでやろうとすると挽き目を毎回同じにするだけで大変だ。
電動ミルをお薦めする理由のひとつだ。
フジローヤル
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僕自身の約十年の経験で言うなら、挽き目を「中細挽き」に固定することには合理的なメリットがあると思う。
多くの同期生とコーヒーを学んで、同じ豆を同じように挽いて、同じ器具で淹れたコーヒーを嫌というほど飲み比べたが、本当に嫌になるくらい味が違う。
さらにその後先生の淹れたコーヒーを飲めば、これが本当に同じ飲み物なのかと思うくらいだ。
そして、ここまで同じ条件でコーヒーを淹れているのだから、違う箇所はドリップの手加減しかないはずなのだ。
だから、先生が淹れているのを凝視して、湯の細さ、タイミング、粉の状態変化などを研究した。
例えば、注滴の前にコーヒーの粉をなるべく平らに均しておくといったような「コツ」に類する部分はすぐに真似できる。
しかし、湯を注いだ後の粉の変化に対応して注湯部分を変えていくような「ワザ」はなかなか会得できない。
経験を積むしかないのだ。
そのような言語化さえも困難な「ワザ」が要求される局面では、なるべくその他の変数は無い方がいい。
おそらく粉の挽き目などは真っ先に固定しておくべきものだろう。
そして、手先が不器用で「劣等生」だった僕でも、中細挽きでならなんとかまともなコーヒーを淹れられるようになったのだ。
相当器用な人ならもしかして、粗挽きでも充分味を出せるのかもしれない。
しかし、そこに何の意味があるのだろう。
ドリップで美味しいコーヒーを淹れるには、少なくとも目玉焼きを美味しく焼く程度には「技術」が必要だと思う。その技術だけに集中するために変数は少ないほどいい。
「コツ」に類する部分は、科学的な根拠に沿ってなるべく固定するのがいいはずだ。
挽き目に関しては、中細挽きがいいと思う。
根拠に関しては、こちらの記事に一度まとめてある。
→Cafe GIGLIO Blog:「粗挽き、ネルドリップ」ってうまいのか
YouTubeなどにもコーヒーを趣味とする人たちが自分の抽出を動画にして上げているのをよく見かけるようになった。
そこでは驚くほど多くの人がドリップなのに「粗挽き」でコーヒーを淹れている。
「今日は粗挽きにして、すこしゆっくり目に淹れてみます」などと解説しながら淹れているのだ。
もう開始20秒くらいで粉が白くなって露出オーバー(写真の「露出」ではなく、コーヒー豆の味が出きってカスカスになった状態を個人的にそう呼んでいます)になっている。
それはそうだろう。
湯に漬け込んで抽出する「浸漬法」(=プレスやサイフォン)を使う時、この方式では灰汁が入ったまま仕上がるので、それを抑えるために粗挽きにするのであって、ドリップの味を変えるために採用する方法ではないのである。
それでも確かにそうすれば味が変わるのは事実であり、それを楽しむ趣味の範疇でやっていることなので、とやかくは言うまい。
しかし一般の人は、オーディオマニアよろしく音楽ではなく、音の変化を楽しむような趣味は無く、美味しいコーヒーの淹れ方を知りたいだけなのではないだろうか。
そんな時、人は器具のトリセツを読むはずで、しかし実際トリセツは読まれないのが常だ。
そう思って、改めてKONO式ドリッパーのトリセツを読んでみたが、書かれた時代が古いのか、当のKONO式珈琲塾で教わったことと違うことが書いてあったりするのだから、これはもうどうしようもない。
ミルの方のトリセツも読んでみたが、どんな器具ならどの挽き目という解説も書いていなかった。
ネットでは、わりと多くのユーザーが、みるっこの挽き目を「6」にセットしていると書いてあったが、これはかなりの粗挽きになる。
味は充分に出せているのだろうか。
うーむ。
トリセツはあてにならないようなので、とりあえず一言だけ申し上げておく。
粗挽きはやめておきなさい。
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