旦部幸博さんという滋賀医大の講師の方が書かれている。
今月「コーヒーの科学」という書籍を発刊予定という。
旦部 幸博
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コラムでは、昨年末、国内で起きたカフェイン錠剤とエナジードリンクの併用によるカフェイン中毒死事故を取り上げ、カフェインの致死量とコーヒーの関係について記述している。
致死量があるのだから、やはりカフェインは毒物なのか、と感じるが、それはアルコールも同じで、過ぎれば毒になるものと我々は上手に共生してきたのである。
しかし酒の話ならば、飲み過ぎはダメよ、ということになるが、カフェインの場合には、存在自体が毒物というイメージがつきまとっているように思う。
その「カフェイン有害説」には根深い原因があるとコラムでは、書かれていた。
詳しく調べてみたので、こちらでもご紹介したい。
それは19世紀末のアメリカではじまった。
C.W.ポストという働き過ぎで神経症になった男がいた。
彼が治療を受けたのは、ケロッグ博士の療養所であった。
ケロッグ博士はシリアルと穀物から作ったカラメルコーヒーという代用飲料で健康な体が作れると主張して、あのケロッグを作った人だ。
いろいろと珍妙な健康法を作り出して、商業的には成功を収めたようだが、その珍妙さは後にブラック・コメディの映画が作られるほどだったという。
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C.W.ポストは、ケロッグ博士の療養所では治癒せず、「病を治すのは医療ではなく、祈りである」という教義の新宗教、クリスチャン・サイエンスに傾倒する。
にもかかわらず、恢復した彼は、ケロッグの療養所で知ったシリアルと代用コーヒー「ポスタム」の会社を興すのだ。
そしてそのポスタム売り込みのためのカフェイン攻撃ネガティブキャンペーンがはじまる。
このキャンペーンは、たまたまコーヒーの消費者価格の高騰と重なり、大成功。
ポストの事業は大成功を収める。
その後、C.W.ポストは「シリアルとポスタムで病気知らず!」「シリアルを食べれば虫垂炎にならない」というキャンペーンの文句を考えれば大変皮肉なことに、1914年に神経症を再発したうえ、虫垂炎を発症し手術を受けることになった。
同年、彼は入院中にピストル自殺してしまう。
その後、ポストの事業は娘が引き継ぎ、社名を「ゼネラルフーヅ」に変更された。
まもなく同社は、コーヒー焙煎会社マクスウェルハウス・コーヒー社を買収して、コーヒー事業に乗り出すことになる。
どういう経緯があったのかはわからない。しかしこれ以上皮肉な話があるだろうか。
さて、現代の巨大なコーヒー産業を「豆の流通」という視点で見た時、避けて通れないのが4つのコーヒー・メジャーの存在だ。
「ネスレ」「P&G」「クラフト」「サラ・リー」
この四社によって、コモディティの豆の流通の大部分が担われている。
この中のクラフトという会社は、日本でもチーズでよく知られているが、この会社のコーヒー部門の母体が「ゼネラルフーヅ」なのである。
日本では、クラフトチーズは森永の扱いだが、コーヒー部門のマクスウェルハウスは、1950年に設立された日本法人がその後、味の素と合併しAGFとなったので関係が見えにくいが、ブレンディやマキシムといったコーヒー・ブランドで生活の中に浸透している。
19世紀末のカフェイン・ネガティブキャンペーンが莫大な資金を生み出し、それが結果的にコーヒー四大メジャーの一角を作り出したということになる。
やはりコーヒーの歴史は、人の「欲」の歴史なのだなあと思う。