2015年9月11日金曜日

軽減税率に殺される

軽減税率のニュースを新聞で読むたびに頭を抱えている。
食品を商材として扱う極小店舗を営む者として、レジにマイナンバーカードを読み取る装置をつけて・・と簡単に書かれているところにまずクラクラしてしまう。

ネットワーク機能をもたせたレジを導入するのに、いったい、いくらぐらいかかるものなのだろう。
開業のとき調べたが、POSデータを扱えるレジが、最も安価なものでもリースで月2万円くらいだったと記憶している。
 
お客様のために美味しい菓子やコーヒーを作るためなら、車のない生活も、携帯電話のない生活もちっとも苦ではないが、政府の政策を実現するためにレジなんかに出費させられるのは御免こうむりたい。
商品の価値、つまり味や安全性に関係ない出費を上乗せされた対価を、これ以上要求されるのは、お客様も嫌だろう。
 
せっかく軽減した消費税分など、この仕組のための設備投資でどこかに飛んでいってしまう。
消費税増税で財布の紐が堅くなっている市況で売り上げも減っていくだろう。
そんな中で我々の生活費をさらに2万円削れと言うのなら、残念ながら折角手にした夢の実現だったが、店舗の継続をあきらめざるを得ないだろう。

消費税が8%に上がった時、新潟の「河治屋」という歴史のあるスーパーが、レジ買い替えの資金を調達出来ずに倒産した。
政策は、これを教訓とせず、さらに前へ進もうとしている。

>財務省は、今回の事業の発足に先立って『買い物記録を集約するデータセンターの新設などインフラ(社会基盤)整備に約3000億円を投じる』ことを想定している

とある。
 
一人あたま4000円の税金還付のために3000億円のインフラ整備を差配するお役人様には、月2万円のやりくりに苦しむ商店主の気持ちはわからないだろうし、大きな企業に対しての効果で、全体としての効果が担保されれば、事業としては成功と判断されるのだろう。
蔑ろにされるものの痛みに鈍感な社会に僕らは生きている。
負けたくはないが、どうやって勝てばいいのかも今はわからない。
ただ頭を抱えるだけだ。

2015年9月7日月曜日

64年のシンボルマークに込められた本当の意味

前職で、幹英生(みきえいせい)さんという画家で、グラフィックデザインも手がけられた方と3年ほどお仕事をさせてもらった。
請け負ったのは、毎年数百ページに及ぶパンフレットを作るという仕事だった。
大詰めになるとクライアント先や印刷所(印刷に回す直前まで修正を重ねるため)にまで泊まりこんだりした。
ハードな仕事だった。

仕事が終わると幹先生が新橋の裏通りにある隠れ家的なお店に連れて行ってくれて、オリンピック周辺のデザイン事情の激動についてよく話してくださった。

僕がいたのはリクルートという会社で、64年オリンピックのシンボルマーク(と当時は言っていました)を作った亀倉雄策先生は当時まだご存命で、リクルートの例のかもめのマークをデザインしてくださったご縁で、リクルート事件で揺れる会社を助けるためにもと仰って、役員をお引き受けくださっていた。


亀倉先生や早川良雄さん(こちらも昭和を代表するグラフィックデザイナーです)と親しかった幹先生はあのシンボルマークの裏話をよく知っておられて、それは本当に面白く、現代の日本に大きな影響を与えたイベントだったのだなあと強く印象に残っている。




まずあれは日の丸じゃない、というところに驚く。赤い太陽なんだと言うんですね。
つまり国旗を置いたんじゃなくて、国旗を定めた時のスピリットを置いているんだと。
すげえ話だと思いました。マジで。

で、そう言い張ってるだけじゃなくて、デザインでそれを主張しているんだと。
それが赤い太陽と金色の五輪の間の限界まで絞った「隙間」なんだと。
あそこにあれ以上余白があると国旗になってしまう。
これがデザインというものかと心底感動しました。

当時のデザイン業界は、今ほどは大きくなく、今の感覚で見れば身内で審査しているみたいな感覚ですが、こういうデザインマインドが生み出す感動みたいなものを共有してるんですね。
そこには何かに似ているとかいう発想は最初からない。

4年ほど前に出た「東京オリンピック物語」にその辺の話も出てるんじゃないかと思って期待して出版を待って買ったのですが、ばっちりそのまま書かれていて嬉しかった。業界ではよく知られた話だったようですね。

他にも、競技の勝者をリアルタイムで報道する世界ではじめてのシステムを開発した日本IBMのエンジニアや、帝国ホテルの村上シェフが采配を振った一万人におよぶ選手村への給食、谷川俊太郎が脚本を書き市川崑が撮った芸術性の高い記録映画が、組織の論理に押しつぶされてスポイルされていく経緯など、64年 のオリンピックを支えてたのは、損得勘定の「政治」や無責任な野次馬と闘った生々しい「個人」のドラマだったことが描かれている。

表舞台も裏方も、今も昔も、結局人の情熱だけがオリンピックの精神に相応しい感動を生み出すのだと思う。
誰かの与えてくれた感動で2020年も振り返ることができるといいなと思います。


TOKYOオリンピック物語、もう文庫になってました。


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野地 秩嘉
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2015年9月5日土曜日

お砂糖のこと

カフェジリオでは、コーヒーと一緒にお使いいただくお砂糖に「ペルーシュ」を使っています。
不揃いな形の角砂糖で、多くのカフェで使われています。


ホワイトとブラウンがあるのですが、ブラウンの減りがはやいですね。
子供の頃、家にも「コーヒー・シュガー」という名前の琥珀色の結晶状の砂糖がありましたが、お客様にもそのような、「コーヒーには茶色い砂糖」というイメージがあるのかもしれません。

うちでは写真のように白と茶をひとつの皿にいれてお出しするのですが、先日お客様から「やっぱり砂糖は漂白してないほうが味がいいのかい?」と訊かれました。
茶色いお砂糖が自然な姿で、白い砂糖は漂白したものという認識が、もしかしたら一般的なのかもしれません。
そういえば、どこかのカフェのブログでもブラウンの方が漂白していないぶんミネラル分が豊富かも、と書いてありました。

砂糖の主成分はショ糖(C12H22O11)という、無色透明で甘味のある結晶なのですが、それが結晶粒子の光の乱反射により白く見えているのです。
三温糖などの褐色の砂糖は、サトウキビなどの蜜の部分からも糖分を絞り出すために加熱、遠心分離を繰り返すうちに糖質がカラメル化してできるものだそうですが、ペルーシュのブラウンは、雰囲気をコーヒーに合わせるためカラメル色素で着色しているものです。
ペルーシュの場合は、白を漂白しているのではなくて、ブラウンを着色していた、ということですね。
(ペルーシュにはカソナードという三温糖タイプのブラウンシュガーもあります)
 白い砂糖は漂白されたものではありませんので安心してお使いください。


このペルーシュ、溶けにくいと感じられるお客様が多いようです。
プレス成形を行わず、不揃いな形を造る独自の製法が原因なのではないかと思うのですが、砂糖を入れて、20~30秒ほど放置しておくとコーヒー液が染み入って溶けやすくなるようです。
最初からくるぐるかき混ぜると、すごいスピードでコーヒーの温度が下がっていって、かえって溶けにくくなるようです。
ペルーシュを使っているお店では、砂糖を入れたらすぐにかき混ぜず、少し待つ。
お試しください。