「リピーターを増やすためのメールマガジンシステムを導入しませんか」
「すでに、ほぼリピーターのみで経営をしていますが。」
「はあ、そうですか」
「Yahoo!の検索ロジックが大きく変わりましたので、新しいSEO対策が必要です」
「お客様のご紹介で、新しいお客様が増えていく経営を志しておりますので、SEO対策になるようなことは慎重に避けております。」
「はあ。そうですか」
別に悪気はないのだが、会話は成立しない。
電話をかけてきた方も不思議に思うだろう。お客さんはたくさん来た方がいいと思っているからだ。何しろ彼らは、この店がどんなとこに建っているか見てもいないのだから無理も無い。
このあいだ、電光掲示版の看板の営業マンが飛び込みで来たが、周囲を見渡し、
「ここでは、やっぱいらないですかね」と言って帰った。
そういうことだ。
営業マン時代に大変お世話になった専門学校の広報部長は、
「本当に素晴らしい学校になれば広告はいらないだろう。その素晴らしさとは、学校の場合は教育内容のことだろう。だから教育内容に、まだ不十分なところがあるから広告に頼っているわけだが、いったい何を広告に書けというのだね?」とおっしゃった。
無論、思考ゲームのようなものだし、充分反論もできるが、なるほど一般論的な広告というものの限界点を上手に指摘していると思い、考え込んでしまった。
考え込んで、それってこれのことだよな、と思い出したのがドラッカーだった。
「企業の目的の定義はひとつしかない。イノベーションとマーケティングで顧客を創造することだ。」という超有名な名言の補足にある、「マーケティングとは、買わないことを選択できる第三者に、喜んで自らの購買力と交換してくれるものを提供する活動のことである。 マーケティングの狙いは、顧客というものをよく知って理解し、製品が顧客にぴったりと合って、ひとりでに売れてしまうようにすることだ。」というこの言葉。
広告の必要の是非を超えて、経営努力の本道を指し示す不滅の真理だ。
当店にお電話いただく、営業の皆様には謹んでこの言葉をお送りしたいと思う。
そして、我々もこの言葉を起点にカフェジリオという「家業」をデザインしている。
「イノベーション」という言葉は、革新するという意味だが、ドラッカーがその言葉を使う時、マーケティングの結果を経営に取り込むことを強く意識している。
そしてその「マーケティング」とは、「市場を知る」ということであり、気の利いた宣伝文句で商品の欠点を覆い隠すことではないのだ。
スターバックスのコンセプトはよく知られているように「第三の場所」というものだ。職場でも家でもない、第三の「場所」を提供することが彼らの主務である。
私たちの店のコンセプトは「現代のオイコス」であるから、地域社会に調和して、我々の持つリソースを役立ててもらう、ということが目的、ということになるだろう。そして我々の持つ優位性の高いリソースといえば、「味」しかない。だから我々の注力すべきイノベーションは、良い味を生み出すための工夫以外に求めるべきでないと思う。
限られたリソースで長く経営するためには「コア」に負担をかける戦略を選択すべきでないということも重要な要素だ。
この店の立地は、そのコンセプトを最も顕在的に表現した戦略だ。
路地裏にあるから、地域の人たちには認識してもらえる。情報を漁って付加価値を求めてカフェめぐりをする人ではなく、「ここ美味しいのよ」というリアルな人間関係の中で紹介してもらえる。そういう我々の提供できる商材とズレのない期待に応えるべく頑張ればいい。だから付加価値に気を取られずに味の研鑽に邁進できるし、そういう日々そのものが生きる楽しさに充ちている。
もちろんそれは我々の都合であって、わかりにくい場所をわざわざ探して来ていただくことのエクスキューズにはならない。いつも来ていただくお客様には本当に感謝しています。
また、ドラッカー自身は、「利潤の追求」は長期的に見ると会社の存続に悪影響を及ぼすことが多く、企業の商材が社会に価値を生み出していくことこそが経営の要諦であるという言い方をしている。
我々のような小さな事業ではこのことはまさに真理で、身の丈を超えた利潤を得るために考慮しなくてはならない「付加価値」は、いつか必ず自分たちに重い負担となって返ってくるだろう。
これからもなるべく「付加価値」に背を向けて、地域と我々自身の家業のために頑張って行きたい。
なお本稿の「ドラッカーが教えてくれた路地裏のカフェの経営」というタイトルは、カフェジリオの常連のお客様でもある株式会社インタフェース代表取締役の五十嵐仁様が企画された講演会でお話させていただいた際、五十嵐様に考えていただいた講演タイトルで、以来気に入って人前でお話をする機会がある度に使わせていただいている。改めてご紹介して御礼申し上げたい。
そしてその「マーケティング」とは、「市場を知る」ということであり、気の利いた宣伝文句で商品の欠点を覆い隠すことではないのだ。
スターバックスのコンセプトはよく知られているように「第三の場所」というものだ。職場でも家でもない、第三の「場所」を提供することが彼らの主務である。
私たちの店のコンセプトは「現代のオイコス」であるから、地域社会に調和して、我々の持つリソースを役立ててもらう、ということが目的、ということになるだろう。そして我々の持つ優位性の高いリソースといえば、「味」しかない。だから我々の注力すべきイノベーションは、良い味を生み出すための工夫以外に求めるべきでないと思う。
限られたリソースで長く経営するためには「コア」に負担をかける戦略を選択すべきでないということも重要な要素だ。
この店の立地は、そのコンセプトを最も顕在的に表現した戦略だ。
路地裏にあるから、地域の人たちには認識してもらえる。情報を漁って付加価値を求めてカフェめぐりをする人ではなく、「ここ美味しいのよ」というリアルな人間関係の中で紹介してもらえる。そういう我々の提供できる商材とズレのない期待に応えるべく頑張ればいい。だから付加価値に気を取られずに味の研鑽に邁進できるし、そういう日々そのものが生きる楽しさに充ちている。
もちろんそれは我々の都合であって、わかりにくい場所をわざわざ探して来ていただくことのエクスキューズにはならない。いつも来ていただくお客様には本当に感謝しています。
また、ドラッカー自身は、「利潤の追求」は長期的に見ると会社の存続に悪影響を及ぼすことが多く、企業の商材が社会に価値を生み出していくことこそが経営の要諦であるという言い方をしている。
我々のような小さな事業ではこのことはまさに真理で、身の丈を超えた利潤を得るために考慮しなくてはならない「付加価値」は、いつか必ず自分たちに重い負担となって返ってくるだろう。
これからもなるべく「付加価値」に背を向けて、地域と我々自身の家業のために頑張って行きたい。
なお本稿の「ドラッカーが教えてくれた路地裏のカフェの経営」というタイトルは、カフェジリオの常連のお客様でもある株式会社インタフェース代表取締役の五十嵐仁様が企画された講演会でお話させていただいた際、五十嵐様に考えていただいた講演タイトルで、以来気に入って人前でお話をする機会がある度に使わせていただいている。改めてご紹介して御礼申し上げたい。
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