2013年8月21日水曜日

カップの取っ手は右か左か

大学生の頃、ススキノの深夜喫茶でバイトしていた。
珈琲のご注文だけは、常時たくさん作ってある珈琲を自分でカップに注いてサーブするスタイルだった。

カップの取っ手は左向きに置く、と習った。
何故か、は聞かなかったし、別に疑問にも思わなかった。


自分で店を始める時、珈琲は焙煎の修行もしたし、淹れ方はKONO式の総本山、珈琲サイフォン社で社長に一から習った。じゃやっぱり美味しい紅茶も入れたいじゃん、と思い、日本紅茶協会のインストラクター資格のための講習会を受けに二週間通った。

その授業の中にカップの置き方の項があり、取っ手を何故左に置かなかればならないかの説明があった。
それはなんと、砂糖とミルクを入れてスプーンでかき混ぜる際、スプーンは(利き手の)右手で持ち、左手で取っ手を支えるという作法があるからなのだそうだ。
なんと、というのは、自分ではスプーンでかき混ぜるときにカップを支えたことがないからだ。

また、飲むときにズルズル音を立ててるのもお作法に適わないので、彼の地では何も入れなくても温度を下げるためにかき混ぜる人が多いのだ。
だからカップの取っ手は基本的に左側。
さすが英国。
日本でもきっと上流の方々は取っ手を支えてスプーンをかき混ぜるのだろう。


さらにかき混ぜ終わった後、スプーンをソーサーの奥に置き、左手でソーサーを持ち上げて、右手で取っ手を持ちくるりと180度カップを廻して飲むのだそうだ。
うーん、そういえば映画なんかでソーサーを持ち上げて飲んでるの見たことあるなあ、などと感心しながら聞いていた。

そういうわけで映画を観る時、カップがどんなふうにサーブされるか注意して観るようになったが、ハリウッド映画では基本的に取っ手は右側で、ガチャンと置かれたカップ&ソーサーからおもむろに取っ手を持ち何も入れずに飲むようなシーンが多い。
まあこちらが実用的というものだ。


作法は重要だが、すでに真意は見失われ、取っ手が左にあろうと右にあろうと取っ手を支えてスプーンをかき回す人はいないし、温度が低くなった後でもズルズル飲む人はズルズル飲む。

というわけで当店では、取っ手右側の「アメリカ式」を採用している。
無作法の段、ご容赦いただきたい。

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