2016年4月5日火曜日

その豆は「熟成」されているのか

今朝街を歩いていたらこんな看板に出会った。


ローソンの店頭に掲げられていた。

「ちゃんとつくったコーヒーはおいしい。」
真理ではないか。

別に他所様のコーヒーの宣伝をしてあげる必要もないが、サイトの説明がいまいちピンずれなので補足しておきたい。
実はけっこう他人事ではない。

ここでいう「ちゃんとつくった」のはローソンさんではなく、ブラジルのミナスジェライス州にあるイパネマ農園さんである。
つまり豆がいい、と言っている。

どういいのか、と言うと「熟成豆」だと言っている。
そして解説サイトでは、トゥーリャという木製貯蔵庫で15日間「熟成」させているから、この豆がうまい、と説明している。
が、すこし説明が不足しているように思う。


トゥーリャで寝かせているということは、天日乾燥をしていないということだ。
なぜ天日乾燥をしなくていいかというと、「樹上で完熟させているから」なのである。
この豆が「ちゃんとしている」ポイントはこの樹上完熟=Dry On Treeにある。

一般にコーヒー豆は、チェリーとして成熟した状態で収穫し、天日乾燥か水洗槽で実を剥ぐ。
樹上完熟の場合には、実が熟しきって完全に乾燥してしまうまで、枝についたままでいるため最後の最後まで養分が送られて、それが味に影響する。
しかしこの農法は管理が難しい上に、味覚上のメリットも決定的とはいえない差しか出てこない。
とは言え、管理が難しい故に「ちゃんと」作らなくてはいけないので、自然とバラつきのない製品が出来上がるのも事実で、昔からヨーロッパで高く評価されてきた農法だ。
つまり、まあ言ってしまえば、味のために採用したこの農法が、「ちゃんとしている」ことを要求する、というのが正確なところだ。
ややこしくてすまない。


僕がはじめてこの農法を知ったのは、日本から大規模農園を夢見てブラジルにわたった島野氏が設立した「トルマリンコーヒー」を導入したのがきっかけだった。
島野さんの農法の特徴がこのDry On Treeだったのである。

しかしその第一人者にしても広大な農園の全数を樹上完熟で作ることはできず、ほんの少量にとどまって、その分高価だったが、本当に美味しいコーヒーだった。
残念ながら今では、この農園も廃業されたと聞いた。

しかし、島野さんに樹上完熟農法を学んだ人は多くいたと聞く。
うちでもそのひとり、バウ農園の「フクダトミオ」を扱っている。


もちろんフクダトミオでもトゥーリャが使われていて、木製貯蔵庫で行われているのは、天日乾燥を行わない工程上の都合で、文字通りの熟成とは少し意味合いが違うが、樹上で完熟している効果か、味はやはり「まろやか」な印象がある。

「ちゃんとつくった」と一言でいってもこのくらいの背景がある。
大昔、缶コーヒーのCMで使われた「荒挽き、ネルドリップ」というキャッチコピーが、無条件に荒挽きの方が「こだわっている」的なイメージを撒き散らかしてしまったように、広告の言葉は不用意に使われて一人歩きした時に危険なので、今回は「熟成豆」という言葉に警鐘を鳴らしておきたかった、というのが本当のところだ。



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