2012年10月9日火曜日

ハンドピックは必要か

今朝はパプア・ニューギニアのコーヒーを焙煎した。焼きあがった豆が冷却器の中にあけられ風を受けながらぐるぐる回っている。その間中じっと目を凝らして焼き色や形状に違和感がある豆を探している。「欠点豆」と言ってカビが生えているものや生育不良のものなど様々だが味にも問題がある場合が多く、きちんと取り除かないとどれだけ上手に焙煎しても台無しになってしまう。



左にあるカタチの悪いふたつの豆が欠点豆。右側のカッコよく膨らんだ豆と較べると一目瞭然だ。焙煎してからだと差が明確になるため効率がいいのだ。今回1kgの焙煎で欠点豆はこのふたつだけだった。

よく、焙煎の本などを読んだり先輩焙煎士さんのお話を伺うと、焙煎前に皿に薄く生豆(なままめ、ですよ)をひいて欠点豆を手で取り除くハンドピックという作業がコーヒーの味を守るためにとても重要だという話を聞く。多い時は20%~30%も混じっているからねえ、と言う。20%~30%も混じっているのなら焼く前に取り除かないと、一回に焼ける量が決まっている以上非効率になる。確かに重要な作業だ。

しかし僕の三番目のコーヒーのお師匠さんは、「最初からそういう豆を買ってはいけないのだ。」と言う。
生産に気を使って、ブランドを目指している生産者は出荷前のハンドピックも徹底してやっているから、欠点豆などほとんど入っていないはずだ。入っていても小粒なのか生育不良なのか区別がつかないケースくらいだろう、と。

で、お師匠さんの薦めて下った生豆屋さんから、教えていただいたとおりに「プレミアム・アイテム」と呼ばれるリストの中からいくつか選んで焙煎してみた。本当に一回の焙煎で数えるほどの欠点豆しか入っていない。最後に冷却の時気をつけて焼いてはじめてわかる欠点豆を手で取り除けばいい。
確かにこういった良質の豆は価格も高い。札幌で自家焙煎をやっている喫茶店の店主さんとお話していて、そんな高い店から取ってるんですか、と驚かれることも多い。しかし、欠点豆のことを別にしてもこういう豆は味もいいのだ。逆に言えば出荷時のハンドピックに手をかけられない安価な豆は生産に関しても然りで味もそれなりだろう。出来上がりの味のことを考えて時間と手間をかけてハンドピックをしているのだとすれば、これは本末転倒ではないだろうか。
以前、「おいしい珈琲の真実」という映画で、エチオピアのイルガチェフェ・コーヒーのハンドピックの様子を観たが、整然として清潔な広い作業場でたくさんの女性が黙々と欠点豆をより分けていた。ああこれがあの綺麗な味を作っているのか、と感動したのを覚えている。我々が少しだけ高い金額を投じて、高品質のコーヒーを選ぶことが彼らの生活に還元されているのだなあ、と感じて、それ以来、多少高くても高品質のコーヒーを使い続けようと決めて、そうしている。

美味しい珈琲を作る第一歩は、まず美味しい生豆を入手することから始まると思う。そして僕は手をかけて磨き上げられた生豆を、精一杯丁寧に燒くことに専心しようと思う。


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