さくらの季節が終わると札幌には強い風が吹く日がある。
先日その強風に煽られて傘の骨が曲がってしまった。
結婚してすぐの頃、皇室御用達という宣伝文句に釣られて買った高価な傘だった。
20年も前のことだが、その傘を買ってから雨の日に営業に出るのがちっとも嫌でなくなった。
お気に入りの雨具で憂鬱な雨を好きな日にするというのは、気の持ちようでマイナスをプラスに変えるもっともわかりやすい事例のひとつだろうが、20年も効果が持続したのだから宣伝文句に偽りがなかったということだと思う。
その大切な傘の折れてしまった骨を見ながら僕はブルーズの起源について思い出していた。
17世紀、アメリカに連れて来られた黒人奴隷たちは、朝起きた時、晴れて空が「青い」のを見ると、今日も一日キツい重労働が待っていると憂鬱な気分になった。
だからその憂鬱な気分を空の色を使って「ブルー」と表現した。その気持ちを載せて歌った歌がブルーズである。
彼らにとってはきっと天候というものは「気の持ちよう」などではどうしようもない運命そのものだったに違いない。
先人たちの超人的な努力と長い時間をかけて、天気の良い日が憂鬱だなどというバカげた世界は変わり、お気に入りの雨具を買ったくらいで憂鬱な日を楽しく過ごすことができる現代に僕らは生きている。
大切にしなくてはならないと思う。
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