珈琲の旨味成分である約800種にも及ぶ化学成分は、焙煎によって生成され、一週間で約60%が消失してしまう、「生鮮食品」です。
ですので、カフェジリオのコーヒーは、すべて店内で焙煎して、鮮度の高いものをお出ししています。
しかし、このカフェを作る時は、そんなことも知らず、最初は珈琲豆の自家焙煎など考えてもいませんでした。
ワンプッシュで一定量のホットコーヒーやエスプレッソがサーブされるマシンのカタログを調べたり、実物を見にショールームに出かけたりしていたくらいです。
と、並行して、自分たちのイメージに近い全国の喫茶店を廻っていました。
珈琲をたくさん飲むと、次第に味がずいぶん違うことがわかってくるのですね。
なにが要因なのかと調べてみると、美味しいところは大抵、自家焙煎か小規模なロースターの豆を使って、抽出も機械ではなく手で淹れていました。
ほほうそれならばと、喫茶店開業のための市民講座やカルチャースクール(探してみると、驚くほど多くの講座が開催されている!そんなに喫茶店やりたい人って多いのか)に行ってみようと、手始めに、当時住んでいた門前仲町の近くの図書館でやっていた市民講座に参加しました。
その講座では、いつも僕らが珈琲豆を買っていたお店の豆と、今朝、講師の方が焙煎してきたという豆を使って目の前でペーパードリップを実践してみせてくださったのですが、そりゃ自家焙煎じゃなきゃだめだわ、と納得できるほど、すべてのことが違っていました。豆の膨らみ。香り。そしてもちろん味。
近くの喫茶店の店主が講師だったので、さっそくその店に豆を買いにいくようになりました。
そして、勧められるままにKONO式のドリップ用器具一式を買って、教わったとおりに淹れてみたが、これがなかなかうまく入らない。
生来不器用な方だし、だいたい家事一つやったことがないのに、珈琲だけ突然上手に入れられるはずがないですよね。
しかし、それで「この珈琲という仕事、思ったよりおもしろい。よし、いっそ自家焙煎でやってやろうじゃないか。」と決心したわけです。
せっかくやるんだから、本家に学ぼうと、KONO式の開発メーカー「珈琲サイフォン社」の珈琲教室に参加しました。
そこで僕は運命の珈琲に出会うのです。
講師は、珈琲サイフォン社社長の河野氏。教室の参加者は四名でした。教室がはじまるとすぐ、KONO式ドリッパーの使い方を簡単にレクチャーしながら四人分のコーヒーを淹れてくれました。
そのコーヒーの味のことは、とうてい言葉では表現できません。
それはコーヒーという飲料が持つ美点を抽象的に束ねたような、恐ろしく完璧な味のするコーヒーだったのです。
自分自身のコーヒーの考え方の転換点になった大事な一杯なので、後から振り返って美化しているのかもしれませんが、そのくらいの衝撃を受けた一杯だったのです。
そしてその日から、河野さんが淹れたコーヒーを再現するための紆余曲折の日々が始まったのでした。
...to be continued
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